『太陽の季節』でデビューした石原裕次郎は飲み仲間。2本掛け持ちだった宝田の撮影が夜9時ごろに終わると、毎日のように銀座へ。
「当時は東西の酒の番付があったんです。西の横綱は勝新太郎、東の横綱は三船敏郎、石原裕次郎と僕。美空ひばり、江利チエミともよく飲みましたね。3人で飲んで、ウイスキー3本は軽く空くってことですね。家で飲んだらそんな飲めないですよ。
外で飲むときは飲みながら周りを気にします。僕らの酒っていうのは、1人対5人とかで飲まなきゃならない。だからみんなの乾杯なんか受けたりしても、グッとお酒を殺して(酔わないように)飲んでいました」
酒は今も飲んでいるが、タバコは19年前にやめた。狭心症でバイパス手術を受け、生死の境をさまよったからだ。
「心臓を守る動脈が96パーセントも狭窄していて、キリで刺されるような痛みの中で仕事していたんです。ぶっ倒れたときに医者から“あんた死んでもいいの?”と言われました。タバコは健康によくありませんからいけませんが、酒は深酒しなければ問題ない。
うちに帰れば缶ビール1本と焼酎を2杯ぐらい。みんなで飲むときは焼酎を5杯ぐらいグーッと飲みます。酒は勢いのモノだから、楽しくてワーッとみんなで飲んでいたら、ストレス発散でいいんです。あと、美味しいものをいただきながら飲む分には、健康にも良薬となるんじゃないかと」
■80歳を越えてもセリフを覚えるのは得意
宝田は'64年『アニーよ銃をとれ』や'66年『風と共に去りぬ』などのミュージカルでの名演も有名だ。82歳の今も、力強い歌声を聴かせる。
「聖路加病院の日野原重明先生が応援してくれるシリーズの第2弾『マリアと緑のプリンセス』を始めて2年目です。全国からオーディションで集まってくる小学3年生から高校3年生までの子どもたちと一緒にやっていると、彼らの若さ、熱心さっていうのをもらえます。
ミュージカルをやることは普通じゃない大変な仕事なんです。発声訓練も肉体訓練もやらなきゃいけない。“歌・踊り・芝居”、この3つの要素ですから、映画とはまた違った演技形態を要求されるんですよね」