■人気漫画の実写化乱発の理由とは

 批判が多く集まるにもかかわらず、なぜ人気漫画の実写化は続くのだろうか。

「製作側に何もデメリットがないんですよね。まず原作ファンの基礎票があるから集客が見込める。話題性もあるから宣伝もしやすい。予算も集めやすい。これだけ批判されるのに実写映画が多いのは、そういった面から企画が通りやすいから」(映画批評家の前田有一さん)

 また“大コケ”に関しても、こう話した。

「実写映画は駄作と評価されるものも多いですが、興行的にはほかの映画に比べて安定しています。コケたと言われるのはハードルが高いから。いまの邦画では、10億円を稼ぐというのは大変なことです。コケたといわれても、それをやすやすと超えていますからね」(前田さん)

 とはいえ、実写映画化が難しいのも事実だという。

「ファンタジーやSFの実写映画は映像のクオリティーが低いものが多い。これは予算と技術がないことが原因。山下智久さんの『テラフォーマーズ』はその代表例ですね。壮大なSFモノをやろうにも日本は技術がない。ファンが求めていた、漫画の中で行われていた壮大なアクション、世界観を表現するにはとてつもなくお金がかかります」(前田さん)

 しかし、その映像面が評価された実写映画もある。

「『ALWAYS 三丁目の夕日'64』は、SFのような未来ではなく、“過去”の表現にCGを使いました。もう走っていない新幹線、かつて日本にあった下町の風景など漫画では描けなかったリアルな昭和30年代を映像にした。まさに映画というジャンルの強みを見せた作品ですね」(前田さん)

 また、ハリウッドのようなフィクションの壮大な世界観を作るのではなく、不良少年が甲子園を目指した『ROOKIES』など、現実に起こりうる“リアル”な世界を舞台にした青春モノや恋愛モノ、人間ドラマなどが実写映画に向いている、と前田さんは言う。

「福士蒼汰さんと有村架純さんのW主演となった『ストロボ・エッジ』、本田翼さん主演の『アオハライド』など学園モノの実写映画化は増えています。また、役者もこれらの出演を機にブレイクしていますね」(映画ライター)

「『NANA』や『のだめカンタービレ』などの音楽モノも原作漫画にはない“音”を表現できるので実写化向き。音楽を制作することは、映像で宇宙を作り出すより、ずっとお金がかかりません。 音楽モノは、音を奏でるシーンが見せ場なわけで、そこに力を注ぎ込めるのは大きい。ファンタジーやSFは壮大な映像、アクションが見せ場なのに、そこに力を注げないわけです」(前田さん)