「出る杭は打たれる」というのは、まさにねたみによって有能な人物が足を引っ張られることを指す。「みんな一緒」であるべきなのに、「一人だけ抜きん出るのはけしからん」といった心理がはたらく。「出る杭は打たれる」ことになる。それを恐れて、だれもが「出る杭」にならないように気を遣う。横並び志向の強い日本では、能力の高い人物ほど葛藤を抱えることになる。

心理学的な3つのアドバイス

 では、組織で引きずりおろされないよう、うまく立ち回るにはどうすればよいか。心理学的なアドバイスを3つ、お伝えしよう。

1)できない人に親切にしてはいけない

「大変だろうと思って親切にしたのに、陰で悪口を言われていたのを知ってショックだった」――。そんなふうに嘆く声も、よく聞く。

 なぜそのようなことになるかといえば、できない人は、「バカにされないか」「軽く見られないか」といった思いを抱えているからだ。「見下され不安」を抱えているのだ。

 見下され不安の強い人は、親切のつもりでアドバイスしてくれても、自分が助かったということよりも、相手のほうが自分よりできるということのほうが気になる。そのため、ちょっとしたことで逆恨みされやすい。

 助かったという感謝の気持ちよりも、相手が上からものを言ってきた、こっちよりできる、こっちより知っているという感じで言ってきた、あの「上から目線がムカつく」といった気持ちが勝る。

 大切なのは、親切心を発揮しすぎないこと。とくに、仕事があまりできない人は、見下され不安を心の中に抱えている可能性が高いということを覚えておきたい。

 そのため、親切のつもりでしたことでも、「優位に立ってものを言うからムカつく」「いい気になっている」などといった反応につながることもある。必要以上にかかわらないようにするのがいいだろう。

2)落ち込みやすい人に励ましの声をかけない

 落ち込んでいる人を見ると、同情心が湧いて、声をかけてあげたくなるものである。だが、落ち込みやすい人にうっかりかかわるとややこしいことになりがちなので注意が必要だ。

 抑うつは攻撃性と関係しており、落ち込みやすい人は攻撃行動を取りやすいことがわかっている。そこには、物事をネガティブに受け止める心の習慣が関係している。

 落ち込みやすい人に同情して励ましの声をかけると、勝手に悪意に解釈されることがある。

「自分は優位に立って気分がいいだろう」などと見当違いの攻撃をされる。