─小学生以下の子どもたちを対象とした上映会では、まだ集中力が長く続かない幼いお子さんが、上映中に元気に会場を走り回っていました。普段の映画館では成立しない光景に、ちょっとほっこりしましたし、お母さんたちもすごく喜ばれていましたよ。
「ありがとうございます。映画は、大きなスクリーンのある劇場で見るべきものとして、監督もキャストもスタッフも作っているんです。これは、関係者みんなが言うんですが、鉄拳さんの『家族のはなし』は、YouTubeにあがっているもので、事前にタブレットやパソコンで見ているんです。
でも、スクリーンで、あの音で見ると、涙が出てくる。タブレットでは泣かなかったのに。というところに映画の真髄がある気がします。あとは、誰かと共有するということがなにより大事だなと。
ひとりで、自分だけのものとして、一時停止ができる状況ではなくて、主導権が作品にある状態。知り合いでも、恋人でも、家族でも、まったくの赤の他人でも、誰かと共有するところになにか価値があるのかなと思います。みんなどこか、寂しさっていうか、シェアする喜びに飢えている感じがします。それが、映画館にはあるんです」
映画作品と向き合う
─多忙な日々を過ごしていらっしゃると思いますが、日ごろ、映画館に行くことは?
「しょっちゅう行っています。“映画館ルーレット”というのをやっていて、事前に調べずに映画館に駆け込んで、いちばん上映時間の近いものを見るんです。たとえ、何度も見ている作品でも、見たくない作品でも必ず見るというルールを決めて。それで、何度か、『君の名は。』に当たっています(笑)。ひとりで来ている男性が、けっこう多くて面白いなと思いました。
自分のベースには劇場体験があるので、映画館に行っていないと、演じる側、作る側としての劇場を意識しなくなっちゃうんです。逆に、その目線があると、踏ん張りがかなりきく。スクリーンで見たときに、ちょっと足りなかったなではなくて、よし頑張ったと思えるロジックになるんです」
─これだけ作品が続いて、評価されても足りないと思うんですね。
「毎回、自分の演技を見るたびに、やめたほうがいいと思います。もう、ひどいなって。評価していただけるとしたら、それは、作品との巡りあわせがよかっただけで。そう言っていただける作品(『昼顔』)の再放送が最近まであったんですが、もうひどいです。自分の芝居なんて、見てられないです。ただちにやめたほうがいいと思う。それは、時間とともに解消されもせず、こんなもんかと慣れるわけでもなく、毎回、落ち込みます」