脳が緊張すると寝つけなくなる
それほどまでに重要な睡眠をいちばん削っているのは、40~50代の女性だ。NHKが行った『国民生活時間調査(’15 )』では、平日の平均睡眠時間は50代女性が最短で6時間31分、次いで40代女性が6時間41分という結果になった。
「クリニックにも、この年代の女性が不眠を訴えて訪れる率は高いです。例えば、高校生くらいの子を持つ女性って、意外と大変なんですよね。朝早くからお弁当作りで、土日も部活の試合があったりして早起きしなきゃならなかったり。夫も働き盛りだから夜遅く、それに付き合うのもひと苦労。仕事をしていたり、介護などの問題も抱えていたらもう、ゆっくり眠る時間などありません」(渋井先生、以下同)
こなすタスクが多く、ストレスも大きくなりがち。
「ストレスによって脳が過緊張状態になると、眠りたくても寝つけなくなります。“明日も早起きなのにこんな時間だ”“仕事があるのにどうしよう”と思えば思うほど、緊張が高まり、リラックスの延長にある眠りとは真逆の方向に」
さらにこの季節、女性に多い冷えも「足が冷たくて寝つけない」「トイレが近くなり夜中に何度も目覚めてしまう」などと睡眠ストレスの原因になる。
渋井先生のもとを訪れる患者の中には、睡眠ストレスを自覚して診察に来るケースもあれば、職場などでつい居眠りをしてしまうことが続き、上司から受診をすすめられて訪れるケースもあるという。
女性ホルモンも睡眠を乱す要因
40~50代の女性に睡眠ストレスが多いのは外的な環境のせいだけではない。女性の身体特有のメカニズムも関係する。大きな要因となっているのが、女性ホルモンの影響だ。
「女性は10代から一生を通して、男性よりも睡眠ストレスを抱えがちです。まず思春期に、女性ホルモンの分泌が急激に高まって月経が始まる。さらに妊娠・出産・授乳を経験しながら、女性ホルモンの激しい変動にさらされる。睡眠もその影響を受け、リズムが乱れたり熟睡することが難しくなったりするのです」
さらに40代以降になると、閉経に向かって女性ホルモンの分泌リズムが変調をきたし、いわゆる更年期障害が生じる。
「自律神経が乱れ、火照りなどの症状が生じるので、この時期から“なかなか寝つけない(入眠障害)”“夜中に目が覚める(中途覚醒)”“必要な睡眠時間がとれず日中眠い(睡眠不足症候群)”ほか、さらに症状が出てくることも少なくありません」
また、自律神経の乱れは身体だけでなく、心にも影響を与えるため、
「“不安感や焦燥感から眠れなくなった”という女性も多いですね」