実際、私が子どもの頃も、同じクラスにお金持ちの子がいましたが、みんなと上手く付き合っていましたよ。あるいは、貧乏な子がいても、可哀想だという発想にはなりませんでした。

 洋服に関して言えば、私自身、家はいたって普通でしたから、3パターンくらいの洋服をずっとローテーションで着ていました。だからと言って、別に誰からも何も言われませんでしたよ。また、子どもの成長は早いから、洋服を買ってもすぐに着られなくなるでしょ。だから、洋服を買えないわけではないけど、そこにあまりお金をかけたくないという人も多いはずなんです。

「親が子どもの世界に口出しすることのもたらす弊害」

 それなりに上手くまわっている子どもの世界に、下手に大人が口出しをするのはどうかと思う。袴の問題についても、結局、親たちがクレームを入れることが、自粛の流れをもたらしているわけですよね。

 先日、知り合いの出産祝いを買いに、デパートの子ども服売り場に行ったのですが、本当にたくさんのブランドがあって驚きました。値段も、私が着ている洋服よりも高いものがたくさんあって。大人の洋服をそのまま小さくしたような洋服とかね。

 もしも今、子どもたちのあいだに、いろいろな洋服を着たり、高い洋服を着ないと恥ずかしい、といった意識があるのなら、それは親の影響が大きいんじゃないかと思うんです。親が自らの見栄で子どもたちに高い洋服を着せることで、子どもの社会のなかに火をつけてしまったところもあるんじゃないのかなと。

 だけど、特別な日に、特別なものを着るのはいいと思うんです。

 実際に息子の卒業式では、袴姿の子が圧倒的に少なかったんです。そういったなかで、袴を着るのは勇気がいるんだろうけど、子どもたちを見てみると目立とうとしている印象は受けなかったですよ。それぞれのご家庭で、お祝いごとへの思想や習慣が反映されているものなのです。むしろ自粛を呼びかけることで、親や子どもたちを嫌な気持ちにさせてしまっている。

 日常から親たちが高い洋服ばかりを買い与えて、親自身の優越感を満たすというのは、違うと思う。それは子どもにも悪影響を及ぼすことだと思いますよ。

《取材・文/岸沙織》