小日向文世も50代で初の映画主演を射止めた。'05年に公開された『銀のエンゼル』だ。
「小日向さんは自分の出身地である北海道を舞台にした映画に出たかったそうです。この映画の舞台は、なんと北海道。お仕事が決まったときは、うれしくてしかたなかったそうですよ」(映画ライター)
その3年後には、ドラマ『あしたの、喜多善男~世界一不運な男の、奇跡の11日間~』(フジテレビ系)でも主役の座に。不幸が続いて自殺まで考える中年男性を演じた。
「本人は“たまたま自分に合う役や企画があっただけで、これが終わったら脇役に戻るんじゃないですか?”とも」(前出・テレビ局関係者)
最後は、近藤芳正。20代のころは、舞台に出てもほぼノーギャラで、バイトで食いつないだという苦労人だ。
苦しい時代も経験した彼は'15年の映画『野良犬はダンスを踊る』で初主演を務めた。しかし、大役に舞い上がりすぎたのか、同作の監督・窪田将治氏からこんな秘話が。
「近藤さんは、この映画で初めてベッドシーンを演じました。同じ日に2人の女性と朝から晩まで絡んだんです。すると翌朝、起きて鼻がかゆいなと思ったら、鼻血が出ていたんですって。“お前、中学生か!”と思いましたね(笑)」
そんな初々しいオジサンの、ひと味違う魅力はというと、
「脇で芝居された経験が長い役者は、受けの芝居がうまいんです。主役で発信する側になっても、相手の立場になって芝居することができるんですよ」(窪田氏)
こうした、ベテランの“主役化”現象について『日経エンタテインメント』元編集長の品田英雄氏に話を聞いた。
「話題の若手俳優は主演の数がものすごく増えて、見る側が“また同じ人が同じ役をやってる”という気持ちになります。そのため、制作する側が、それまで脇でやっていた方を主演にすればどうなるかと考えた結果ではないでしょうか。
また、何十年も見ている人にはベテラン俳優のほうが共感しやすいです。おもしろそうな企画に人気があるだけの若手より、演技のうまいベテランを起用するケースはあると思います」
若いイケメンもいいけど、経験に裏打ちされたベテランの演技にもぜひ注目を!