伝説のイラストレーターが語る現実とフィクションの狭間
■『定本 薔薇の記憶』
(宇野亞喜良=著 900円+税 立東舎文庫)
宇野亞喜良という名前に聞き覚えがなくても、スレンダーな身体と大きな目の女性のイラストを誰でも1度は見たことがあるはず。
本書は、1960年代からイラストレーターとして活躍してきた著者のエッセイを集大成したもの。この文庫版は、本文を増補し、カラー口絵、阿川佐和子の解説も入ってお買い得です。
宇野さんは、映画の中で登場人物が映画を見る場面が好きだと言います。「現実のリアリティーを喪失すればするほどに、フィクションの世界のリアリティを獲得していく」ところに美しさを感じるのでしょうか。偏愛する映画や絵画、絵本について語りながら、同時に自分自身のイラストの秘密もそっと告白してくれるので、ファンにはたまりません。
80代になったいまも精力的に舞台美術などに取り組んでいる宇野亞喜良は、親友の和田誠と並び日本が誇るイラストレーターなのです。
(文/南陀楼綾繁)
出産を機にはじめた雑貨屋さんのノウハウと子どもの成長を綴った1冊
■『雑貨店おやつへようこそ 小さなお店のつくり方 つづけ方』
(トノイケミキ=著 1400円+税 西日本出版社)
京都の阪急沿線の駅近くにある「雑貨店おやつ」は、全国のクリエイターの雑貨を販売するお店。著者のトノイケミキさんは、このお店の店主であり、一児の母でもあります。
本書では、お店の宣伝方法や商品の集め方、店舗物件の選び方など、通販から着手し現在の実店舗を構えるまでの経緯を紹介。ビジネス的な内容はもちろん、妊娠、出産、育児をしながら雑貨店を運営する中でどんな壁にぶつかり、どう乗り越えてきたのかも具体的に記されており、お店と子どもの成長記録としての側面も。
著者は時に自分を甘やかし、時に周囲の力を上手に借りながら仕事と家庭を両立しています。専業主婦が贅沢な選択肢となった昨今、女性に期待される役割は増える一方。理想の生き方を求めつつ、仕事に育児に励む著者の姿は、特に働く女性に大きく響くことでしょう。
(文/熊谷あづさ)
何となく不安だし、幸せになりたいし、真剣に恋をしたことがある女性に贈る1冊
■『美人が婚活してみたら』
(とあるアラ子=著 1000円 小学館クリエイティブ)
「結婚したい!」「普通に子どもとか産んで育ててみたい!」アラサー女性なら誰もが1度は考えたであろう、心の奥底からの叫びが続々と出てくるコミックがコチラ。
美人の主人公・タカコはなんとなく将来への不安から婚活を始めるのですが、婚活アプリ、婚活バー、結婚相談所など出会いの場に行くもののいまいちピンとこない人ばかり。運命の出会いを期待しては、希望が崩れ去る描写は、うまくいかない恋愛をしたことがあるすべての女性が共感できます。
終わりが見えない婚活に病気や転職、結婚できれば誰でもいいやと思っていても「やっぱり恋がしたい」、自分に好意を寄せてくれる人に不信感を感じた「1回しか会ってないのになんで好きなんて思えるのかな」など、メンタルがえぐられまくるセリフが刺さります。
(文/週刊女性編集部)