「年をとれば家族の誰かが面倒を見てくれる、そんな時代は過ぎました」
幸せに逝くためにまずは生前を考える
そう話すのは、相続・終活コンサルタントで行政書士の明石久美さん。少子化でアテにできる子どもや若い世代も減り、寿命は延びても認知症や寝たきりといった高齢者が激増。
夫婦や親子の“老老介護”が問題になってはいるが、身内がいるだけまだまし。ひとりで老い、看取(みと)られずに亡くなる独居老人がさらに増えることが予想される。
「コロナを機に葬儀や墓への認識も変わりました。小規模な葬儀や火葬のみを行う直葬が増え、遺骨を別の場所に移す“墓じまい”も加速。
さまざまな終活事情が過渡期といえます。令和の終活は“高齢おひとりさま”として、どう見苦しくなく晩年を過ごし、周りに迷惑をかけずに逝くか。それが大きなポイントだと思います」(明石さん、以下同)
人生のエンディングをイメージしながら準備しておけば孤独死の不安や自身亡きあとの相続トラブルを減らすことができる。
“ひとり暮らしで大した遺産もないし、死んだあとは野となれ山となれ”とぼんやり老いを過ごすのは、自身にも周囲にもリスクとなると認識し、誰もが“終活”を行うことが重要なのだ。
「どんな人でも生前は誰かの手を借りないといけないときがありますし、財産や家財道具など死後の片づけは避けられないこと。体力があるうちに少しずつ備えましょう」
まず考えるべきは、生前の生活。身体や認知の衰えが起きたときの対処や財産の管理をどうするかを決めておけば、いざというときに困らない。その上で、死後の事務手続き、相続、遺品整理などをどうするか考えること。
「今の時代、多くの人がお金も時間もやりくりしながら生きています。たとえわが子であっても、遺産整理や部屋の片づけなど終活にまつわる作業に手を貸してもらえたならお礼を渡すくらいの気持ちで。逝きざまは生きざま、と心得て」