虫歯予防に取り組む足立区に、同区が推奨している、食事のひと口目に野菜を食べる“ベジ・ファースト”から思わぬ副産物も現れた。
「糖尿病対策として'13年9月から始めた取り組みです。昨年11月、『子どもの健康・生活実態調査』から、野菜から食べる子どもは、野菜以外を先に食べている子どもに比べ、虫歯の割合が減りました。しかし科学的な裏づけはまだできていない段階です」
と馬場課長。
「推測ですが、野菜の繊維が歯の汚れを落とし、酸を生みだす病原菌が減るのかもしれませんね」(前出・相田准教授)
足立区では野菜の摂取量の向上に取り組んでいる。
「保育園などで野菜の調理体験などを行っています。その成果か、保護者にアンケートをとったところ、85%の親御さんから子どもが食べられる野菜が増えたと回答がありました」(馬場課長)
野菜を食べ、栄養バランスを整える一方、歯の健康も改善できる。まさに一石二鳥だ。
虫歯はすぐに治療することが大事だが、予防することも重要と相田准教授は話す。
「学校などでは歯磨き指導や保護者への啓発。行政では乳幼児健診でのフッ素塗布、教育現場でのフッ素洗口の導入。家庭では歯磨きの徹底は当然で、何よりもしっかりとした生活習慣を身につけさせることが子どもの将来のためです」
虫歯予防でフッ素洗口に力を入れている新潟県や佐賀県は他の自治体より虫歯の罹患率が低いという。
前出・足立区の馬場課長は、地域全体での解決を掲げる。
「母親が歯を磨きなさいと言っても、“や〜だよ”と子どもは言う。それがサッカーや野球のコーチが“歯を食いしばってプレーするには歯を磨け。一流選手はみんな歯がきれいなんだ”と言うと、磨こうかなという気持ちになる」
地域全体が子育てしていくことが健康格差をなくす方策になるのかもしれない。