大脳新皮質を守る6つのルール
脳幹に負荷をかけず、大脳辺縁系の暴走を抑える。2つの層を整えたうえで、次は、身体の内側と外側からやってくる、いろいろな情報を選択・判断・系列化して処理する“思考”を育てていきます。
大脳新皮質の中でも前頭葉は、複雑で高度な認知機能を発揮する、いわば脳の最高司令官。しかし、生まれてすぐに大人のような脳機能をもつわけではありません。20年前後の歳月を経て完成され、大人らしい理性をたもてるようになります。
大脳新皮質は理性の中枢です。特に前頭葉は、複雑で高度な認知機能を発揮する、いわば脳の最高司令官。しかし、間違った取り扱い方をしていると、やがて前頭葉の衰退を招くことになります。正しい取り扱い方を知って、しっかりと実践していきましょう!
12:脳の仕事量を把握して、きちんと休ませる
疲労が蓄積すると“イライラ”“気まぐれ”“無関心・無反応”“動きが鈍い”などの兆候が出てきます。これはとても危険なシグナルです。前頭葉にベストパフォーマンスさせるためには脳を休ませください。徹夜や働きすぎは禁物。
13:頭を使うには入力だけでなく“出力”まで行う
休ませた後、使うことも重要です。“出力(アウトプット)”まで行って、初めて前頭葉を使ったことになります。例えば新聞記事を読むだけでは使ったことになりません。音読したり、記事を写したり、誰かに伝えたりと、目・耳・口・手足を動かして“出力”することが大切です。
14:常に変化を入れて、前頭葉の対応力を鍛える
脳は楽な状況にいると、いつまでもこのままでいたいと思ってしまう=“状況依存性”に陥ります。この依存性は、ふだんから小さな変化を脳に対応させることで克服できます。生活を全く変えず、克服を怠ると、脳は次第に硬直化してしまいますよ。特に40代以降は、変化への対応力を育てるように意識してください。
15:感情を制御する習慣を持つ
感情的な反応は動物的な防衛反応で、必ずしも悪いことではありません。しかし、社会生活の中で感情の波のままに動くと、人と衝突し、それが後々の行動や活動の障害となることがあります。感情的になって興奮したときは、他人ならばどうするかを考える、という習慣をつけておくとよいでしょう。
16:1日2回の思考力ピークを逃さない
大脳新皮質が最高の状態になるのは午前の終わりと午後の終わりと考えられます。この最高の思考のチャンスを無駄にしないことが大事です。
17:転職力を鍛えて、いつまでも仕事を辞めない
いつまでも冴えた脳でいたいと思うなら、常に何らかの仕事に関わっている必要があります。辞めてしまうような状況になると、脳の力は一気に低下します。ですから、仕事を辞めなければならないときは、その前から、現在の仕事にかわるものの準備をしてください。いまは、ひとつの仕事だけで一生を終える時代ではありません。
大脳新皮質はとても複雑なので、ひと言ではいえませんが、あえてまとめるなら「新しい世界を開き続けること」が適切な取り扱い方となります。脳は変化に気づくと働くようになります。脳を正しく有効に動かし続けている世界に認知症はありません。常に変化を取り入れ、脳を働かせ続けましょう。生涯、成長していくのが大脳新皮質の本質なのですから。
<プロフィール>
築山節先生
日本大学大学院医学研究科卒業。医学博士。公益財団法人河野臨牀医学研究所附属北品川クリニック所長。脳神経外科の専門医として数多くの診療治療にたずさわり、’92年、脳疾患後の脳機能回復をはかる「高次脳機能外来」を開設。著書に57万部のベストセラー『脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める』や最新刊『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』など多数。