●イベント用と割り切る
コストコで人気のデリは、確かに華やかだ。鶏1羽を丸ごと焼き上げたロティサリーチキン、トルティーヤを使ったハイローラーBLTにボリュームサラダ。絶対このままでは冷蔵庫に入らない巨大なピザやチーズケーキも、ホームパーティや親戚一同が集まる場ならおおっと言ってもらえるし、話も盛り上がる。
デパ地下で、こうしたデリをこれだけの量購入するとなると、コストコよりはるかに高くつくだろう。相手がデパ地下なら、コストコもいい勝負ができるというわけだ。
なお昨今、共働き家庭が増えたことで、作り置きおかずがブームとなっている。週末に約1週間分のおかずを作って保存しておくわけだが、この手間を惜しまなければ大量パックの食材も意義はある。
たとえば、キロ単位で肉を買ったとしよう。メインの肉おかずを作るには、大人2人分でだいたい150~200g使う。小さい子どものいる家庭なら1食300g使用するとしようか。すると2キロを買っても1週間分の計算になる。1食分ずつ小分けして、下ごしらえする時間をかけることができるなら悪くはない。
他の業務用スーパーと比べても大して安くないが…
大容量で安い、というだけではコストコ人気は説明できないと考え、ほかにも大容量の業務用食材を扱うスーパーにも顔を出してみた。
「業務スーパー」(神戸物産)と「肉のハナマサ」(花正)を回ったが、どちらも調味料や粉類、冷凍食品は大袋だし、もちろん食肉も1キロ前後のパックで売られている。単価に直すとコストコよりも安いだろうと思われる商品もあった。
年会費も払わずに済み、普段の食卓に上る食材がより手ごろな価格で買えるのだから、わざわざ車を出してコストコまで行かなくても十分では、と思えてしまう。
しかし、何か物足りない。たぶん、これらのスーパーは日常の買い物の延長にあり、想像の範囲なのだ。それに比べ、コストコの店舗であの圧倒的な物量感を見ると、ははあ恐れ入りましたとひれ伏したくなる。あまりに大きいもの、あまりに多いものを見ると、日常にはないアドレナリンが出てくる気がする。いわば大仏みたいなものだ。
これでもかという巨大スケールの商品が鎮座する異空間に置かれた時、人はある種のトランス状態に入り、興奮して買い物をしてしまうのかもしれない。コストコ=大仏だとすると、年会費は拝観料ということか。拝観料なら仕方ない。謹んでお支払いしよう。
松崎 のり子(まつざき のりこ)◎消費経済ジャーナリスト 20年以上にわたり、『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』『ESSE』『Caz』などのマネー記事を取材・編集し、お金にまつわる多くの知識を得る。自分自身も、家電は買ったことがない(すべて誕生日にプレゼントしてもらう!)、食卓は常に白いものメイン(もやし、ちくわ、えのき、豆腐)などと徹底したこだわりを持ち、割り勘の支払い時は、友人の間で「おサイフを開くスピードが遅い人」として有名。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成した。また、「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアを研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金がたまらない』(講談社)。