切れる・詰まる・裂けると大病に血管リスク度&対策をチェック

いつまでも健康に生きられると思っていても、血管は老化してボロボロだったりする。40代以降は早めに血管の病気を知って意識をケアに向けましょう」

 まずは、下の血管リスク度を測るリストを使って、自分の血管力をチェックしてみよう。リスク指数が5以上当てはまる人は、血管が老化しているおそれがある。そのまま放置すれば、命にかかわるような病気につながりかねない。

【あなたの血管リスク度は?】
(1) 腹囲が男性は85cm以上、女性は90cm以上ある
(2) 階段や坂を歩くとすぐ息が上がりつらい
(3) 負けず嫌いな性格で、ついイライラしてしまう
(4) 親やきょうだいに脳卒中、心臓病になった人がいる
(5) 下肢にしびれや冷えを感じることが多い
(6) 日ごろから歩くことが少なく、運動もしない
(7) 不規則な生活を送りがちだ
(8) 満腹になるまで食べないと気がすまない
(9) タバコを吸っている
(10) 高血圧と診断、またはその傾向ありと指摘されている
(11) 脂質異常症と診断、またはその傾向ありと指摘されている
(12) 糖尿病と診断、またはその傾向ありと指摘されている
※(1)〜(8)がリスク指数1点、(9)〜(12)がリスク指数5点
【合計0~4点】血管は正常範囲
【合計5~8点】血管が老化している可能性がある
【合計9点以上】血管が老化している可能性が高い

「血管の病気には切れる・詰まる・裂けるという3つのパターンがあります」

 血管が切れる病気の代表例は、脳出血や大動脈瘤破裂など。詰まる病気心筋梗塞や脳梗塞を起こし、裂ける病気は大動脈解離が発症する。

「リスクを減らすと同時に動脈硬化にならない生活をしていきましょう」

■動脈硬化を起こすメカニズムとは?

 動脈硬化は、加齢によって血管が硬くなって弾力性が失われ、血液の通り道が狭くなっていく病気。動脈硬化=血管の老化と考えて間違いない。

「動脈硬化は古代エジプトのミイラからも見つかっているほど、大昔からの“迷惑な友”でした」

 なぜ、どのようにして起きるのか? 動脈硬化のなかでも代表的な「アテローム硬化」について池谷先生に解説してもらった。

「アテローム硬化は、黄色いドロドロした粥状のプラークというものが血管内壁にたまり、これには皮膚の傷や風邪などと同じく、炎症反応が関係しています」

 風邪をひくと、体内に入ったウイルスを異物と判断し免疫細胞がやっつけてくれる。また皮膚が傷つくと入ってきた細菌をやっつけて傷を修復してくれたりもする。これらは炎症反応と呼ばれる働きだ。

動脈硬化も同じで、血管の内側に傷ができると、そこから血管の内皮細胞の中へ血中の脂質が入りこんでいきます。そこで脂質が酸化すると、免疫細胞に異物としてとらえられてしまうのです」

 細菌やウイルスが体内へ侵入した場合のように、酸化した脂質は免疫細胞に処理され泡沫細胞に変化する。壊れやすい薄い膜の中に泡沫細胞がたまり、瘤を作り、アテローム硬化となる。大動脈や脳動脈、冠動脈などの比較的太い動脈に起こり、心筋梗塞や脳卒中の原因となる。

 頸動脈エコーという首に超音波をあてる検査では、動脈硬化を視覚的に診断できる。頸動脈に動脈硬化が見つかると、全身の動脈硬化が進んでいる可能性が。

「頸動脈エコーの検査を受けて動脈硬化が見つかると、“この瘤、治療でとれますか?”と聞いてくる患者さんがいるのですが、残念ながら完全に治すことはできません。瘤を破裂させないように安定させることが目標になります」

 血管が詰まる病気は、瘤が大きくなって詰まるのではなく、破裂することで起こる。破裂した場所を修復しようと、血小板が集まり、それにより血栓ができて血管が詰まるからだ。