あるお客様に、飴がやめられない方がいらっしゃいました。その方は、ひたすら飴を噛むのです。ひどいときには1日3袋食べると言います。自分でも異常だと思うけれども、どうしてもやめられないと悩んでいました。
彼女の話をよくよく聞いてみると、その癖が始まったのは3年前からで、ちょうど恋人が突然姿を消した時期と重なることがわかりました。
どうやら、そのときに受けた心の傷がきっかけで、彼女は孤独や不安、悲しみに襲われると、無意識のうちに飴を食べるようになっていたようなのです。飴が彼女の心を癒していたのですね。
これは特別な例だと思われるかもしれませんが、実は誰にでもあることです。あなたは「おふくろの味」と言われて何を思い出しますか。お味噌汁なのか、肉じゃがなのか、カレーなのか。ちなみに私の場合は、いりこの出汁とドーナツです。
今は母の手料理を食べる機会も少なくなりましたが、100%手作りのドーナツや、風邪で学校を休んだときにつくってくれたいりこ出汁のおうどんは、思い出すだけでも心を温めてくれる、思い出の味です。
食事は生まれてから一番最初に覚える行為です。そして今まで1日3回、絶えることなく繰り返し行われてきました。それが経験や記憶と結びついて、感情や食行動を引き起こしていることは多々あります。
発展途上国では、小さい頃に与えられる食事が発育・衛生上よくないものであることもあります。そういうものを「母親の味」として育ってしまった子どもは、それを食べることで精神的な癒しを感じるようになります。
にもかかわらず、「これは体によくないものだから」と栄養面だけをみて取り上げることは、精神衛生上その子にとってよくないものになってしまうのです。
あなたのおふくろの味は?
私はお客様の食欲と心の結びつきを知るために「おふくろの味は何ですか?」と聞くようにしています。
最近は「おふくろの味なんてない」と言われる方がとても増えました。もちろん時代は変化しているわけですから、昔のような完璧な食卓を目指そうとは思いません。
でも、「朝食はお菓子、夜食は買っただけのお惣菜」という食生活を定着させることがいかに子どもにとってリスクがあることかは、おわかりいただけるのではないでしょうか。
食育は体の発達だけでなく、心や感情の発達、そして大人になってその子が何を選択できるかに非常に重要な役割を果たしているのです。そして、この刺激の強い「噛む」がその刷り込みによりストレスを感じたときに欲することが多いことに気づきました。
もしかしたらあなたの食欲は食べたいではなく「噛みたい」かもしれません。そんな方にこそ、食事瞑想は効果的です。噛むことでしか感じられていなかった快感を「しっかりと味わう」に変えていけるのですから、心も満たせるし自然とやめられます。
自信を持ってお勧めします。あなたのやめられない、は必ずやめられます。