もしも夫がゲイ(バイセクシャル)だったら
大塚寧々の役どころとしては、鋼太郎と結婚30年を迎えた妻だ。糟糠の妻かどうかはわからないが、着々と出世をして部長にまで上り詰めた鋼太郎を支え、30年という長い年月を共に過ごしてきたパートナーである。
ところがある日突然、鋼太郎から離婚を切り出される。土下座までされる。理由を聞きだしたところ、「好きな人ができた」という。そりゃ他に女ができたと思うわな。
鋼太郎の寝言が「はるたん」(田中の役名は春田創一)だったため、「はるか」と聞き違えた寧々は会社に乗り込んで不倫相手を探す。そこで驚愕の真実を知る。鋼太郎が好きなのは、女ではなく、田中だったのだ。
おっさんたちのキャッキャしたBL模様にすっかり夢中になっていたのだが、寧々の心模様を考えると非常に複雑である。もし自分の夫が、あるいは長年付き合ってきたパートナーがゲイ(バイセクシャル)だと知ったら?
相当モヤモヤするだろう。打ちのめされるかもしれない。女ではなく男に負ける悔しさ。女として積み上げてきたものが一気に崩される絶望感。
いや、人生を共に歩むパートナーなのに、「なぜそのことを言ってくれなかったのか」と思うかもしれない。自分を傷つけまい、と慮(おもんぱか)ってくれた「優しさ」ととらえられるだろうか。そんな優しいウソに、自分は大人対応できるかどうか。太刀打ちできるだろうか。
逆に、相手が男のほうがあきらめがつくかもしれない。人生後半戦をありのままの自分で生きたい、と勇気を振り絞ってカミングアウトした夫を、無理やりつなぎとめる手立てはない。それ相応の代償を支払ってもらい、自分も新たな人生を歩き始めるしかない。
なーんてことをモヤモヤと脳内シミュレーションしたりして、オンナアラートにつながったのだ。
重要なポイントが、鋼太郎・寧々夫妻に子どもはいない点である。子どもというブレーキはかからない。子どもをブレーキ扱いするのもなんだけど、いないほうがより自分の人生の主語を明確にしやすいのかも。そんなメリットをつらつらと考えてしまった。