何が言いたいかというと、20代、30代で「上」の友達がいなくても、悲観しなくてもいいが、問題は老いてからよと。

 もし、あなたが今、仲良しを装って友達づきあいしていたとしても、それはふつうのこと。毎日を生きていくには、にぎわいも必要なので、落ち込むことはないが、老いてからのことを少し想像してもらえたらうれしい。

 実は、「上」・「特上」の友達と出会うのは結婚相手に出会うより難しい。だから、自分が結婚できたからっといって、ポイっと友達を捨てないでください。ちょっと嫌だと切ってしまう性格のわたしの後悔からのお願いです。人生は長い、そして人生の後半ほど友達が大事になるとわたしは言いたい。

 昨日、一緒にショッピングに行った女友達が、もしかして「特上」の友達かもしれない。帰り際に「あの人って……」と舌打ちしたとしても。逃がした魚は大きいかもしれない。長い目で相手を見る癖をつけよう。そして、「特上」の友達に育てよう。

 たとえ結婚して家族を持ったとしても、子供はいつしか離れ、夫婦関係も結婚当初と同じではない。老いとともに、にぎやかだった人間関係も寂しいものになっていく。わたしも、還暦を迎えたときに、誰もいない寂しさを実感させられた。自分がノリノリのときには気づかない、大海原にひとりで立っている寂寥(せきりょう)感だ。

『1周回って知らない話』というテレビ番組があるが、友達もまた同じだ。

 幸いにも、わたしには、お互いの鍵を渡しあえる友達がいるが、30代で知り合ったとき、彼女は結婚していた。1周回って現在はひとり身。長い間には疎遠になっていた時期もあったが、気が付くと「特上」の友達になっていたのだ。

 さあ、夏だ! 元気がほしい! 友達を誘って、特上のうな重を食べに行きませんか。「並」だと思っていた友達が「特上」かもしれないですよ。この話をうな重食べながらするの、どうですか?


<プロフィール>
松原惇子(まつばら・じゅんこ)
1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事。著書に『「ひとりの老後」はこわくない』(PHP文庫)、『老後ひとりぼっち』(SB新書)など多数。