'17年11月6日だった。
心愛さんはアンケートの自由回答欄に《お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにはけられたりたたかれたりします。先生、どうにかできませんか》と綴っている。
選択式の設問では「いじめを誰から受けましたか」という質問に「家族」。いじめの内容を問う設問では「ぼう力を受けている」と記入。心愛さんの、心からのSOSだった。
学校はすぐさま動いた。
「その日のうちに本人から聞き取りを行い、市教育委員会に報告しました。市が児童相談所へ通報し、翌日、一時保護となりました」
と前出の教頭。この対応に、勇一郎容疑者は怒った。家族に言わずに児相に通報するのはおかしいと不満をぶつけ、学校の考え方が信頼できないため転校すると宣言。
2つの顔を持つ容疑者
年が明け'18年1月、話し合いの場が持たれた。前出の教頭がその様子を伝える。
「校長、教務、担任、市教委から2名、ご両親の7名で話し合いました。父親は非常に威圧的といいますか、訴えるなどと脅し文句を言われました。“誘拐だ!”“家族を引き離すのか!”“誘拐された親の気持ちがわかるのか”とバーッと言われまして……」
学校は、勇一郎容疑者の圧に屈し、心愛さんを保護する際は父親に情報を公開するという「念書」を書いて渡したという。その数日後、市教委は心愛さんが勇気をもってSOSを発信した“あのアンケート”のコピーまで父親に手渡すという失態を演じた。
心愛さんを一時保護した千葉県柏児童相談所の担当者は、
「親族宅で生活をするということで一時保護を解除し、その後2回の面談を経て、'18年2月28日には、自宅に戻す決定をしました」
と経緯を説明。勇一郎容疑者は山崎小に不信感を持ったとして、心愛さんを野田市立二ツ塚小学校に転校させた。
二ツ塚小の校長は、
「お父さんは、学校が家庭に介入することを拒みました。“家庭訪問するときは私の許可を取ってからにしてください”と言っていました」
と明かす。児相は、
「児相への不信感を持っていて、拒否するような姿勢でした。……職員が強く怒鳴られることもありました」(前出・児相担当者)