街づくりに“成功”はない
オガールプロジェクトを率いた岡崎さんは紫波町の出身だ。大学卒業後、特殊法人『地域振興整備公団』(現・都市再生機構)に就職。建設省に出向していたが、建設会社を営んでいた父が亡くなり、母の願いもあって29歳で故郷に戻り会社を継いだ。帰郷してからも、週末を利用して東洋大学大学院で公民連携を学んだ。いわば街づくりのエキスパートだ。
'09年2月、紫波町長からのオファーで岡崎さんは町の経営品質会議の委員に就任。ここからプロジェクトが本格始動した。
「僕が信じているのはマーケット(市場)だけ。それがいちばんの通信簿です。オガールでホテルをやると言ったときも“こんな場所でホテル事業なんて当たらない”と言われた。でも、稼働率は80%から90%。盛岡市に仕事で来たビジネスマンが使っています」
市内から車で20〜30分、朝食付きで税込み6000円とあって好評だ。
「盛岡にも、そのくらいの料金のビジネスホテルはありますが、夜の食事代は高いし駐車場代がかかる。ここなら駐車場代はタダでコンビニもあり、居酒屋も3件ある。盛岡に泊まると現地事務所の人に飲みに誘われることもありますよね。そういう仕事の延長を嫌う人も増えていますから」
週末はビジネスマンの集客は下がるのだが、バレーボールの合宿が入る。
「だから、これは合宿ビジネスとビジネスホテルを融合させた業態なんです」
いまや「地方創生の星」として称賛を集める紫波町。自治体職員・議員による視察件数は'17年、'18年と2年連続で全国1位を記録したほどだ。しかし岡崎さんは、「街づくりに成功なんてない」と言ってはばからない。
「例えばディズニーランドも、いま5万人が来ているからといって、1年後にも5万人が来るという保証はない。何が起こるかわかりませんから。
日本の街づくりで間違っているのは、成功という得体の知れない評価基準で語っていること。街が完成してからが本当のスタート。だからオガールは、今のところうまくいっているという表現が正しいんです。まったく安心していません」