多くの介護現場を取材してきた介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、平均寿命が延びた現在、親の介護は10年、20年と長期化する傾向にあると話します。実際に介護が始まったときに、何をすればよいのでしょうか? また、起こりがちなトラブルを避ける方法を紹介します。

あなたの親の自己負担額は何割?

 具体的に介護や支援を受けることが決まったら、介護にかかるお金を予想します。そのときに重要になるのが、親の自己負担額です。

 介護保険のサービスを利用する場合、自己負担額は原則1割。ただし、所得により負担割合が2割、3割になるケースもあります。

 2割負担は、単身で年金収入のみの場合、年収280万円以上(夫婦世帯は年収346万円以上)。2割負担の人のうち、単身で年収340万円以上(年金収入のみの場合344万円、夫婦世帯では463万円以上)は、3割負担。ただし、2割、3割負担になるケースでも、介護サービスに自己負担の上限額が設定される「高額介護サービス費」の支給制度で、上限を超えた分が戻ってくることもあります。

最初の難関は親の心理的ハードル

 介護保険の認定結果が出たら、「ケアプラン」を立てます。これは、介護を受ける人にとって、「どんなサービスが」「いつ」「どれぐらい必要か」の計画を立てること。「ケアプラン」の作成は、要介護の親の場合は、介護保険のプロ、ケアマネージャーにお願いするのが一般的。要支援1・2のケースなどでは、地域包括支援センターに依頼します。

 介護保険の認定結果が出ると、ケアマネージャーがいる事業所の一覧表をもらえます。「最初からいきなり『よいケアマネージャー』を選ぶのは難しいもの。まずはざっくばらんに相談して、相性を探りましょう。ケアマネージャーは後から変更可能です」(太田さん)

 

「介護サービスでも、施設利用でも、最初はまず8割の親御さんは嫌がります」と太田さん。人に頼ることへの抵抗感が強く、また、施設利用では「年寄りばかりのところへ行くのは嫌!」という声が多いそう。

 対処法は、ほかの人に説得してもらうこと。高齢な親は「肝心なことは長男が決めないと」と考えているケースが多く、息子の説得には応じる例も。また、医者からの助言も効果が高いといいます。「親の診察に同行して、医師と顔見知りになっておき、『介護認定を受けたほうがいいと言われたのですが、嫌がります。先生からおっしゃっていただけませんか』とお願いしてみましょう」(太田さん)。親から診察室への同行を拒まれ、看護師さんに同様のことを書いたメモを渡した例もあるとか。親の性格や自分との関係を考えながら、戦略を練りましょう。