逃亡用の楽器箱は特注品?
「音響機材用の箱はほとんどがオーダーメード。そのためゴーン被告が逃亡に使ったとみられる箱も作戦のために作られた可能性があると考えられます」(音響機材のレンタル業者の担当者)
米メディアはゴーン被告が隠れていたとみられる箱を掲載、そこで同様の大きさの箱に記者も入ってみた。
中は台と蓋(ふた)の隙間から光が漏れる程度で真っ暗。ゴーン被告が入っていた箱は空気穴が開けられていたというが、そうでもしないと空気がこもって暑くて息苦しい。
「長時間、中に潜んでいたら酸欠になるかもしれません。横になり寝返りが打てれば平気かもしれないですが、体勢が変えられないのもきつい」(前出・担当者)
箱の中にはウレタンが敷かれており、さらに毛布などを敷いていれば移動時の振動も多少は軽減されるのではないかという。
ゴーン被告は暗闇の中で一体、何を思っていたのだろう。
入管・税関、縦割りのスキを突かれた?
「人の管理をする入国管理は法務省。荷物、物品を管理するのは税関で財務省。それぞれが管理しています。この2つのシステムは必ずしもリンクしているわけではなく、日ごろから密接に連携しているとも言い難い。だから荷物の中に入った人間の密出国を許してしまったのであれば、これは行政の縦割りの弊害が出て、その不完全なスキを突かれたとも考えられるでしょう」
と指摘するのは元入管職員で入管問題救援センターの木下洋一氏。
入管法上、外国人が出国する際には必ず手続きが必要。それは当然、プライベートジェットの搭乗者もだ。しかし、「出国はあくまでも確認。許可ではないため入国に比べて緩くなる。入国についてもその国の権限で可否判断されるので、出国の記録がないから入国ができないとは必ずしも言い切れない」(木下氏)
海外渡航を禁じられる中、審査官の目をくぐって出国することは非常に難しく、変装や偽造パスポートの使用ではなく、荷物に紛れ出国する道を選んだ。木下氏は訴える。
「再発防止だけでなく、入管と税関の連携についても検討していかなければならない」