様々な治療法が確立されている
病的振戦の中でも、高齢者を中心に多くみられるのは「本態性振戦」。身体のどこでも起こる可能性があり、原因は不明だが、そもそも“本態性”とは原因が明らかではないという意味の医学用語なのだそう。現時点では小脳に原因がありそうだと推定されている。
いずれにせよ、症状の診断が必要だが「本態性振戦」の場合はパーキンソン病のように、ふるえが進行して動けなくなるといったおそれはなく、命にかかわる病気ではない。
しかし、進行すると日常生活にさまざまな支障が出るほか、料理人なら包丁が持てないなど、仕事にさし障りが出る場合は深刻な問題だ。
「実際、本態性振戦の患者さんは脳のMRI検査などを受けても特に異常がないと診断されています。高齢者に多いといわれていますが、発症のピークは20代と60代のふたつの世代にあるとされ、患者さんの中には小学生のころから手のふるえに悩んでいた方もいます。
また、確実に遺伝する病気ではないものの、祖父母や両親などにふるえがあった人が、ある年齢になってから発症することもあります」(仲野先生)
パーキンソン病などの大病でなければ、日常生活に大きな影を落とすこともあるのに加齢による症状として放っておかれることも多かった「本態性振戦」。しかし、近年は有効な治療法が確立され、症状を克服している患者さんが増えているのだそう。
「軽度の本態性振戦で患者さんが特に治療を希望しない場合は、経過観察ですむこともあります。日常生活に支障が出る患者さんは、まず最初に薬物治療となり、交感神経の活性を抑える作用がある薬が使われます。薬物治療であまり効果が得られない場合は、外科治療に進むことになります」(仲野先生)
外科治療には、従来「高周波凝固術」「脳深部刺激療法」「ガンマナイフ(保険適用なし)」などがあったが、現在、注目を集めているのが「MRガイド下集束超音波治療」(FUS)。
昨年6月に本態性振戦への保険適用となり、自由診療のときよりも軽い自己負担(手術費用10万~40万円程度+入院期間は1週間程度)で受けられるようになった最新治療だ。(自己負担の割合によって金額が異なる)