チョコレートの奴隷になる子どもたち
「今すぐここから抜け出したい……」
児童労働の撤廃と予防に取り組む国際協力NGO『ACE』の事務局長・白木朋子さんは、ガーナで出会った少年たちのSOSに胸を衝(つ)かれた。
11歳と14歳の少年2人は、ガーナ北部の親元を離れ、南部のカカオ農家で強制労働をさせられていた。雇い主は、2人を学校に通わせると親に口約束していたという。
「ひとりは家を出るときにお父さんの携帯番号を書いたメモをシャツの胸ポケットに入れていたんですけど、バス移動で寝ている間になくなっていて“親と連絡をとりたい”と頼んでも聞いてもらえなかった。人身売買はこうして行われているんです」(白木さん、以下同)
世界第1位、2位のカカオ生産国であるコートジボワールとガーナだけでも、義務教育を受けられず、危険な労働を余儀なくされる18歳未満の児童労働者は約222万人にのぼる。学校に通いながら働く子もいるが、「毎日とにかく疲れる」と嘆いている。
籠(かご)に入れた20キロ前後のカカオの実を炎天下、数時間歩いて運ぶ重労働も子どもにやらせる仕事のひとつだ。
「地面に置いた籠を子どもが自分で頭の上にのせることができる重量しか運ばせてはいけない決まりがあるのですが、試しに地面に置いてみてもらうと持ち上げられない。大人が子どもの頭の上にのせているからです」
こうした児童労働が蔓延する根底には、不公平な貿易とカカオ豆の低すぎる価格設定がある。貧困状態にある農園は子どもを労働力として動員せざるをえないのだ。
そこで私たち消費者が注目したいのは、発展途上国の作物や製品を適正な価格で取引し、生産者の生活向上を支える国際認証『フェアトレード』だ。ワインやコーヒー、スパイスなどの商品も認証ラベルの対象となっている。
イオンやセブン-イレブンも同認証チョコレートを展開。
また、森永製菓はバレンタイン特別期間を中心に売り上げの一部を児童労働撤廃に取り組む『ACE』などの団体に寄付。
ロッテはフェアカカオの割合を2028年までに50%以上にする目標を公表している。
今年3月より、ブラックサンダーでおなじみの有楽製菓は、商品の一部を児童労働のないカカオ原料に切り替える取り組みを始めたばかりだ。
「5回の買い物のうち1回を認証つきの商品にしたり、好きなメーカーや小売店に意見を届けることも消費者にできるアクションです。チョコを味わう人の幸福感と生産者が抱える苦悩。その落差をなくそうとする取り組みを買うことで応援してほしい」