大事なのは「我慢しないこと」
何らかの病気の前兆として現れる症状のひとつには、肩こりもあります。
「“身体がだるい”“身体が冷える”“肩がこる”など、健康とはいえないものの病気とは診断できない状態を東洋医学では『未病』という概念で考えます。不調のいちばん初めには自律神経の失調が起こります。その初期症状として出やすいのが肩こりです」
事実、脳梗塞や心筋梗塞、狭心症、腎臓病、肺がんなど、肩こりが起こる病気は多岐にわたります。肩こりを単なる疲れや老化現象と侮(あなど)ってはいけないということです。
「肩こりが気になる場合は、その原因を突き止めて、病気を治療することが大切です。また、肩こりを治すことでめまいやふらつきが改善することもあります。実際、私のクリニックに来院している患者さんの中には、肩こりの治療を受けて症状がラクになるにつれて、めまいやふらつきがよくなった方がたくさんいらっしゃいます」
耳鼻科や整形外科、脳外科など病院にはいろいろな診療科目がありますが、めまいやふらつき、肩こりを診てもらえるのは、どの診療科が適切なのでしょうか。
「例えば、吐き気や激しい頭痛を伴うめまいの場合はできるだけ早く脳外科を受診してください。また、耳の痛みや難聴など耳の症状がある場合は耳鼻科へ、貧血の症状がある場合は内科で診てもらうのがいいでしょう。肩こりの場合は漢方外来を受診すると根本的な原因を踏まえたうえで治療を受けることができます」
何よりも、深刻な病気で命を落とさないためには“我慢しないこと”が重要。
「病気は早期発見が大切です。『これくらいなら大丈夫』と我慢せずに、気になる症状があればできるだけ早く病院を受診。その行動が、命に関わる怖い病気を遠ざけることにつながります」
◎未病の肩こり・めまいには漢方を
東洋医学的において、めまいには複数の原因があり血液不足や気の流れの停滞などが挙げられます。肩こりは冷えやストレスなどによって肩の筋肉や組織に「気・血」というエネルギーや栄養物質がめぐらなくなることで起こると考えられています。いずれの場合も体質や症状に合う漢方薬によって不調の改善を目指しましょう。
(取材・文/熊谷あづさ)
笠木伸平先生 ◎みなと元町内科クリニック院長。神戸大学医学部附属病院検査部副部長。2001年神戸大学医学部卒業後、内科医師、膠原病リウマチ専門医、米国国立衛生研究所の特別研究員などを経て2018年5月、神戸市内に現クリニックを開業。