〈プラスになる財産〉
名義が義母のままで保険金がもらえない

「まずすべきは、財産の現状確認です。夫婦で“金目のもの”を片っ端からノートにリストアップしてみてください。生命保険なら、どんなときにいくらもらえるのか、受取人は誰かまで確認しておいて。将来もらえる公的年金も『ねんきん定期便』や年金事務所でチェック」(武藤さん)

 財産リストの内容を夫婦で共有することも忘れずに。リストのありかは、できれば子どもにも伝えておこう。

「入院時や死亡時、家族は何がどこにあるのかわからず大変なんです。財産のありかがわからないと、相続手続きの際も苦労します。手続きが終わったあとから別の資産が見つかると、遺族でもめたり、相続税の延滞税がかかったりすることも」(福田さん)

 リストアップすると、思わぬ効果もあるそう。

「銀行口座やクレジットカードなどがやたらと多いことに気づくはず。銀行口座もクレカも、夫婦で2つか3つあれば十分ですよね。不要なものは全部解約を。自然と生前整理になり、死後の手続きも軽減されます」(武藤さん)

 要介護になったときにお金の管理をどうするのかも考えておきたい。特に最近よく聞くのが、「認知症になったことで口座が凍結され、家族であっても引き出せなくて困っている」という話。認知症患者の割合は年齢とともに上がり、85歳では27%に達してしまうから他人事じゃない!

「認知症対策としては、財産の管理を任せたい人を決めて“任意後見人”に指定しておくと、認知症になっても後見人が口座からお金を引き出せます。認知症になった後だと、家庭裁判所に法定後見人を指定してもらわなくてはならず、法律の専門家が指定された場合は手数料が月数万円かかることも。元気なうちに手続きを」(福田さん)

 任意後見、法定後見などの成年後見制度については、司法書士や地域包括支援センターが相談を受け付けている。

 死亡時の相続対策では、特に不動産に注意。

「マイホームは、妻が相続するよう遺言書を書いてもらいましょう。息子の名義にしてしまって居場所がなくなる、さらには息子に先立たれて嫁や孫に家を持っていかれてしまうケースもあります。遺留分(最低限相続できる割合)を渡すために、家を手放すしかなくなった場合でも配偶者居住権を確保するなど手立てはあります。司法書士や税理士に相談のうえ、遺言書を書いてもらって」(福田さん)

【プラス財産の例】

◎預貯金……へそくり口座の存在を隠していた場合や、ネットバンク取引を家族が知らなかった場合。死後、誰にも知られないまま休眠口座に。
対策:金融機関・支店名・口座番号、ネットバンクの契約者番号やパスワードをリストアップ。死後すぐ見つけられるよう配慮してもらう。

◎生命保険……遺族が保険の存在を知らなければ請求することができない。受取人名義にも注意。親や前の配偶者のままの場合、保険金はその人の手に。
対策:保障内容や受取人、保険証券の保管場所を確認。受取人が親や前の配偶者のままなら変更しておく。

◎不動産……土地の名義が死亡した祖父母などのままだとやっかい。法定相続人全員の承認がないと名義を書き換えられず、売ることもできない。
対策:まずは所有する不動産をリストアップし、登記内容を確認。親や祖父母の名義のままの場合、早めに関係者と交渉、名義をまとめる。

◎株・投信など…… 株式などの有価証券取引などはペーパーレスになっているため、遺族が資産の存在に気づかないことが。特にネット証券は注意。
対策:取引金融機関や支店、保有資産(株式の銘柄や株数など)を書き出しておく。

◎趣味の品、コレクションなど……昭和時代のおもちゃなど、マニアの間で高額取引されていることを知らず、遺族がゴミとして処分してしまうことが。
対策:思い入れのあるモノについては、その思いとだいたいの価値、処分する場合のおすすめの店などを書き出しておく。