介護離婚できるかどうかのチェックポイント
このように京子さんは介護離婚という苦渋の決断を下したのですが、実際のところ、誰しも踏み切れるわけではありません。介護離婚できるかどうかのポイントをチェックリストにまとめましたので、参考にしてください。
1.すでに夫の介護を始めているかどうか
まだ夫が元気で心身ともに丈夫なら「もし介護が必要になったら、誰が引き取るのか」をこれから親戚一同でゼロから話し合って決めることができます。
一方、すでに妻が夫の介護を担っている場合、妻がこれから介護を続けたくないのなら、代わりの人間に頼まなければなりませんが、夫の親戚筋もそれぞれの事情(子どもの教育にお金がかかるので経済的に無理、配偶者の親の面倒をみているので肉体的に無理、兄弟姉妹間の仲が悪かったので心理的に無理など)を抱えているので、説得できない可能性もあります。
2.離婚検討中もしくは協議中かどうか
離婚検討中や協議中に夫が倒れた場合です。離婚したのに元妻が元夫の世話をしているケースを私は聞いたことがありませんが、すでに「夫との離婚」が頭をよぎった時点で、妻のなかでは「夫に尽くす」という気持ちは消え失せているのでしょう。なぜなら、夫が倒れる前に離婚が成立せず、検討中や協議中の段階にとどまっていたとしても、妻の心のなかでは「離婚したも同然」だからです。「夫を介護したくないから」ではなく、「もともと離婚するつもりだった」というのも介護離婚の理由になり得るのです。
3.過去に「もし夫が倒れたら、どのように暮らしていくか」を個別具体的に検討したことがあるかどうか
妻が前もって用意周到な準備……例えば、法律等を調べたり、他の親戚に相談したり、自分の心を整理したりした結果、「夫が倒れても家に残る」「倒れたら家を出る」の2択のうち、後者を選んだ場合です。特に躊躇せず、離婚を切り出すことができるでしょう。
逆に何の準備もせず、その日を迎えた場合や、他の親戚への根回しもせず、夫が倒れた場合はすでに手遅れです。
なぜなら、夫が倒れた後、妻が何も言わずに夫の世話を始め、ある程度時間が流れていくと、親戚一同のなかで「今のままで」という暗黙の了解ができあがってしまい、今さら「主人のことなんですけど」とお伺いを立てるのは雰囲気的に難しいからです。
4.夫を任せられる兄弟姉妹等がいるかどうか
今現在、夫と衣食住をともにし、家事全般を妻が行っている状態で夫が倒れた場合、夫を引き取ってくれる夫の兄弟姉妹等がいるかどうかです。引き取り手がいないのに、要介護の夫を残して出ていくのは現実的に難しいです。
もともと妻1人で夫の世話をしていたのだから、「これ以上、1人で面倒をみるのは無理」と頼み込んだところで、他の親戚は「最後まで面倒見なさいよ!」と門前払いするでしょう。しかし、親戚の中には夫の遺産目当てで妻を厄介払いすべく「あなた(妻)に任せられない!」と猫をかぶるケースもあります。
妻が「介護離婚」をするなら、事前の準備やタイミング、夫の親戚との関係性が重要だと心得ておきましょう。
露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/