もう心が疲れちゃったから

 高校生の亜実さん(仮名=16)の家族は、ちょっとしたことでケンカが起きる。先日も洗濯物を片づけるのが遅れたとき、母親が「そこに座れ」と言い、叱責し、ドライヤーを投げつけた。母親の怒りがおさまらないところへ父親も加わり、殴られることもある。

 ただ、両親はともに医療や介護の仕事をしているので、緊急事態宣言中は家族がそろうことも少なかった。そのため、亜実さんの精神状態は落ち着いていた。

 しかし、10月になって学校がテスト期間に入ると部活もなく、家にいることが増えた。兄は大学受験で落ち着かない。そのうえ、医療・介護従事者である両親はコロナ感染拡大でストレスがたまったのか、ケンカが増え、家じゅうが殺伐としていた。最近も兄と姉が殴り合っていたのに、母親は止めない。

 そんな家族内のストレスが増えたとき、亜実さんは、スマホのメモに心情を綴ることがある。

亜美さんはリスカをすると一時的に自殺衝動がやわらぐ
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もう耐えられないから もう心が疲れちゃったから もう生きている気力がないから もう死のう……

 別の日、その言葉のあとに〈今は安定期、だからまだ頑張れる。けど、悪い波が来たら? またリスカするの? それでまたまた後悔するの? そんなんだったら死のうよ。もう頑張らなくていいんじゃない?〉と、自問自答のようにつけ足した。

 自室で、手首をカッターで傷つけることもあるが、両親に見つかったことはない。

部屋のドアを開かないようにしてリストカットします親にバレたら、殺されそうですでも、血のついたティッシュを母親が見つけたことがありますそのときは、転んで鼻血が出た、と言ってごまかしました」(亜美さん)

 メモに綴ることとリスカ以外のストレス解消は、公園にいること、少し遠い駅まで数時間、何も考えずに歩いて往復すること。

「死にたい気持ち」を友達に相談したことはない。

“死にたい人”と思われるのがイヤです学校では“何も考えていない元気なキャラ”として通っていますし、かまってちゃんと思われたくないですね友達には迷惑をかけたくないですから