親の預貯金、借金、年金などを把握すべし

 周囲でぽつぽつと「親を看取った」話が出始めると、「わが家はどうするんだろう」と悩むもの。それぞれのシーンでどんな費用が、いくらぐらいかかるか知りたい!

「気になるのはわかりますが、実はいくらかかるかはその人の収入や状況によって全然違ってくるんです。例えば介護保険の自己負担割合は、親の収入によって、1割、2割、3割と変わってきますから。ですから、いくらかかるかよりも先に、“そもそも自分の親はいくら出せるのか”を把握し、“いくらかけられるか”を知ることが先決ですね」(前出・太田差惠子さん、以下同)

 聞き出す内容としては、預貯金のほか、借金、年金受給額、民間保険の給付金など。

 ただし、お金のことをいきなり聞き出そうとすると、親も気分を害してしまう可能性が……。

 そこで例えば、「お友達のお父さんが倒れたとき、入院費が必要なのにどこにどんなお金があるかわからなくて困ったみたい。うちも、いざというとき、どのお金を使ったらいいのか、知っておきたいんだけど……」と、知人の例などを出しながら、あくまでも親を心配するスタンスで切り出すのがおすすめだそう。そのお金の情報は、きょうだいで共有するようにして。

親の通帳+印鑑だけだと子がお金を下ろせない!

 親の手持ちを把握したら、次は、いざというとき、親のお金をどうやって引き出すのかも話し合っておきたい。

 さもないと、親が倒れて入院、親の通帳と印鑑を持って銀行に行ったら、「委任状はお持ちですか? なければお金は下ろせません」と言われた──なんてことに。

「だから、親御さんがお元気なうちに、キャッシュカードの保管場所と、暗証番号について聞いておきましょう。本人の同意のうえなら、家族が引き出しても問題にはなりません。ただし、親が暗証番号を話す義務はありません。無理やり聞き出すと高齢者虐待、違法行為になってしまうから気をつけて。暗証番号そのものまで聞けない場合は、『どこかに書いて保管しておいて、その場所だけ教えて』と頼んでみては?」

 そのほか、金融機関によっては、子どもを代理人としてあらかじめ指名してもらっておく、「代理人カード(家族カード)」として2枚目のキャッシュカードを作る、といったことができる場合も。

「子名義の口座を新たに作り、介護用のお金を親から預かっておくという方法もあります」

 この場合、ただ受け取るだけだと贈与とみなされる可能性があるので、そのお金は「預り金」とする覚書を親子で交わし、以降、看病や介護でかかったお金は預り金から出金。出費の際のレシートや明細を保管しておくことを忘れずに!

「窓口でないと手続きができない定期預金などは、できれば元気なうちに本人に解約してもらい、普通口座に移しておいてもらうといいですね」