認知症になるか、ならないかの重要なカギは「奥歯の健康」が握っている。そう聞くと意外に思うかもしれません。

「私が『歯の状態と認知症の因果関係』を分析した結果、奥歯がない人は認知症の危険度が増すことが明らかになりました。『奥歯がなく、義歯も使用していない人』は、自分の歯が20本以上ある人より、認知症になるリスクが1・85倍も高かったのです」

 そう教えてくれたのは、歯科医の山本龍生先生。

奥歯がなくなると認知症になる3つの理由

 奥歯を失うと、認知症になる理由は3つあります。

(1)脳への刺激が減る

「奥歯を使ってよく噛むと、歯根のまわりや頬の筋肉が刺激されて脳に伝わり、脳の血流がよくなって、脳細胞が活性化します。奥歯を失うとその刺激が得られず、脳の老化につながります」(山本先生、以下同)

(2)脳に必要な栄養素が不足

「かたいものが噛めなくなるために食べられないものが増えて、食事のバランスが悪くなります。その結果、認知症を防ぐビタミンなどの摂取量も不足してしまいます」

(3)奥歯を失う原因となる歯周病が、脳に悪影響を与える

「奥歯が歯周病になると、歯ぐきは慢性的な炎症状態になります。すると活性酸素などが過剰に発生し、血管に入って脳に運ばれ、悪影響を及ぼします。さらに、近年ではアルツハイマー型認知症の患者の脳から歯周病菌が見つかり、この菌自体が認知症の原因になると考えられています」

 つまり、歯周病になって奥歯を失うことが認知症の原因になるだけでなく、歯周病そのものが直接的な認知症の原因になると判明したのです。