「笑点」メンバーの林家木久扇が先月、自宅で転倒して大腿骨を骨折。現在は無事に手術を終えてリハビリ中という。大腿骨骨折は寝たきりにつながりやすい深刻なケガ。83歳という笑点メンバー最高齢の木久扇にはしっかりリハビリをして、また元気な笑顔を茶の間に届けてほしいものだ。
転倒による死者数は交通事故の2倍
実はいま、転倒が大問題になっている。東京消防庁によると、事故で救急搬送されたシニアの約8割が転倒が原因というデータも。また、転倒による死者数は、交通事故の死者数の2倍という報告もある。
また、たとえ死に至らなくても、転倒による骨折で要介護になりやすく、医療費や介護費がかさむ。転倒による医療・介護費は年間約9308億円という試算があるほど。しかも骨折で寝たきりになると長期間に及ぶケースが多いこともあり、費用は年々増加の一途をたどっていて、いま転倒予防は重要な課題になっている。
そんななか、転倒に関する興味深いデータが。東京消防庁の調べによると、転倒事故の半数以上が「家の中」で起こっているというのだ(画像の円グラフ参照)。
しかも、部屋の敷居や床の電気コードなど、自宅のちょっとした段差や物につまずいて大ケガをしてしまうことも多いという。木久扇も自宅にある仕事場の段差につまずいたことが原因。
なぜ慣れ親しんでいるはずのちょっとした段差で転んでしまうのか。これまで転倒の原因といえば「筋力の低下」と考えられていたが、最新の研究で「小脳の力」も関係していることがわかってきた。
小脳が活発なら転ばない?
「小脳は脳の奥深くに位置する小さな器官。手足のバランスや身体の平衡感覚をつかさどっています」と説明するのは、小脳とめまいの関係を研究している東海大学医学部付属病院の五島史行先生。
小脳がしっかりと働いていれば、段差などにつまずいてバランスを崩しても、小脳がそのことに気づいて体勢を修正してくれるという。逆に、小脳の活動が低下していると、つまずいたあとに体勢を立て直すことができずに転んでしまう。
「つまり、つまずいたあとに転倒するかどうかは、小脳が活発に働いているかが大きく関係しているのです」(五島先生、以下同)
小脳の活動が低下してしまう原因は、(1)加齢、(2)アルコールのとりすぎ、(3)運動不足が考えられるが、実は個人差も大きいという。
「ある実験をしたところ、40代や50代でも小脳の力が衰えているケースがあることがわかりました。決して、シニアに限った話ではないのです」
たしかに、若いころは何ともなかった階段や段差から下りるのが、バランスを崩しそうで怖いと感じるようになった人も少なくないだろう。