マスクの有効性は科学的に示されているが…
たしかに、ウイルスの粒子自体はマスクの網目より小さいが、新型コロナウイルスで注目されている感染経路は飛沫感染。咳やくしゃみといった飛沫と一緒にウイルスが放出され、それを近くにいる人が口や鼻などから吸い込んで感染してしまう。ウイルスを含んだ飛沫はウイルスの粒子よりもかなり大きいので、マスクでブロックすることができる。
実際、理化学研究所などがスーパーコンピューター「富岳」を使って不織布マスクで実験したところ、顔に隙間なく着用した場合は、飛沫や飛沫より小さいエアロゾルをほぼブロックでき、マスクと顔に隙間がある場合でも、約7割ブロックできることがわかったと発表した。
もちろん、エアロゾルなどはマスクだけで100%防ぐことは難しいので、富岳を使った実験のチームリーダーである神戸大学システム情報学研究科の坪倉誠教授は、マスクだけでなく、換気を行うことも大事だとしているが、感染予防としてのマスクの有効性は科学的に示されている。また、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も、マスクの徹底と換気の重要性を記者会見などで何度も強調している。
M医師は「取材拒否」
その点についてM医師はどう考えているのか、話を聞くべく取材を申し込んだが、「取材拒否」という返答だった。
ノーマスクカフェに置かれたチラシには、M医師の言葉として以下のようなことも書かれている。
「マスクは使い方によっては不衛生です」
「マスクに期待できる効果は唾液を飛ばさないこと。つまりマスクには唾液がたくさんついているということです。さらに表面には細菌やウイルスが付着しているため、触ると不衛生です」
M医師は他に、ブログや動画などで「コロナは大騒ぎしすぎ」、「症状がないなら病気とは言えない」、「私の耳鼻咽喉科はこんなにヒマなことはこれまでにない、というほどヒマ。医療崩壊間際!と叫んでいた情報は、本当なのだろうかと疑う」といった発言も。
夜の9時近くになってもノーマスクカフェから客がひける様子はない。客の楽しそうな声が店の外まで漏れ聞こえてくる。このカフェ、実は約1か月後に開幕される東京五輪の男子サッカー日本代表戦などが行われる大規模会場と同じ市内にある。大会組織委員会は、1万人まで観客を入れるという。
もしサッカー観戦後に熱狂した観客が近くにあるこの店を訪れ、マスクを外して大騒ぎしたら……。東京都内は23区と多摩地域が緊急事態宣言からまん延防止等重点措置に切り替わったとはいえ、まだまだ気を引き締めないといけないと思うのだが──。