夫のネガティブ発言に嫌気がさして…

 香澄さん夫婦は共働きだったので、日々の生活費はお互いの収入割合に応じて按分していました。結婚当初、夫の年収は300万円、香澄さんは700万円。そこで夫3:妻7という割合で月末に1か月分を清算することを約束。今年で結婚8年目。昨年の年収は夫が350万円、香澄さんは800万円ですが、生活費の負担割合を見直さないまま現在に至ったそうです。

「尊敬できない人と結婚生活を続けるのは無理です!」と香澄さんは憤りますが、逆鱗に触れたのは夫の後ろ向きなマイナス思考、そして根暗な性格。

「最初は彼とうまくやっていけると信じていました」と香澄さんは夫との結婚を決めたときの心境を振り返ります。筆者の経験上、夫婦生活を良好に保つには上下関係を作らないことが肝です。香澄さんは夫と比べ、年齢、年収、貯金額は上回りますが、だからといって上から目線で夫を見下したり、馬鹿にしたりせず、偉そうな態度をとらないように心がけたそう。

 香澄さんの話を聞くと、夫と対等な関係を築こうと努力を重ねた形跡が見受けられました。例えば、夫の愚痴や不満、世間話を親身に聞いてあげたそう。内心では「くだらない」と思うことは多々ありましたが、顔には出さず、話の腰を折らず、グッと堪えたのですが、一方の夫はどうでしょうか? 「もうダメだよ」「会社辞めようかなぁ」「何にもいいことないな」などネガティブな返事を連発。

 前向きで楽観的、嫌なことがあってもひと晩で忘れる香澄さんとは真逆。「思わず、ため息をついちゃいますよ!」と香澄さんは振り返ります。夫との価値観や考え方、性格の違いで悩まされる場面はカレンダーをめくればめくるほど増えていくばかり。

 そして結婚3年目。しびれを切らした香澄さんは夫の愚痴や不満をまともに聞かず、「だから何なの!」と途中で遮ることに抵抗がなくなり、そのせいで夫は香澄さんに話しかけにくくなったようです。現在では家庭内別居の状態。ひとつ屋根の下で暮らしているのに、ほとんど会話を交わさず、お互いの物音に怯える日々。「今はなるべくすれ違わないように聞き耳を立てています」と香澄さんは言います。

 もちろん、スキンシップは皆無。配偶者をとおり越して同居人以下の存在に成り下がったのですが、お互いにまだアラフォー。香澄さんは別の相手を探し、新しい家庭を築き、残りの人生を充実させたいと考えていました。「まだ人生をやり直すことができる年齢ですから」と決断の理由を説明します。

離婚を言い渡すと夫の守銭奴ぶりが発覚

 香澄さんは思い切って夫と向き合い、離婚の意思を伝えたところ、夫も今の生活を続けるよりは、と承諾。こうして、お互いが納得の上、「離婚」という結論に至ったのですが、もちろん、タダで別れるわけではありません。急に「貯金を半分よこせ」と迫ってきた夫の守銭奴ぶりに、香澄さんは驚きを隠せなかったと言います。こうして2人の間には「財産分与」という高い壁が立ちふさがったのです。

 ところで、なぜ共働きなのに香澄さんの家事負担が10割だったのでしょうか? 結婚当初はまだ新型コロナウイルスが蔓延する前。夫は平日、「仕事の付き合いだ」と飲み歩くので帰宅するのは午前様だったといいます。そして休日は前日の酒が残り、頭痛と吐き気が続き、動き出すのは午後。そのため、夫は家事を一切やらず、定時上がりで下戸の香澄さんに丸投げ。「彼のためじゃないんです! 他にやる人がいないからしょうがなく……」と香澄さんは苦しい胸のうちを吐露します。そんな夫のために料理を作り、衣服を洗い、掃除をするのは苦痛以外の何物でもありませんでした。

 入社時の上司に「残業するのは無能な証拠」と教えられた香澄さんにとって、夫の所業は無能の極みでしたが、香澄さんが憤慨している理由は他にも。夫は仕事帰りだけでなく、スポーツ観戦や国内旅行、実家への帰省のたびに飲み歩くタイプ。お酒の勢いで気が大きくなり、誰も頼んでいないのに、飲み友達の勘定をおごってしまうことも多々あったそうです。