医師よりも薬剤師の方が詳しい
「餅は餅屋というわけではないですが、よいジェネリック医薬品というのは、医師よりも薬剤師のほうがよく知っています。逆に言えば、どのジェネリックは質がいいということをよく理解している医師は数少ないはず。なので、ジェネリック医薬品を選ぶ際は、薬局で薬剤師としっかり相談するのがベストですね」
とはいえ、前述のようにジェネリック医薬品を使うことで儲かる仕組みができているならば、薬局で相談してもジェネリック医薬品をすすめられるだけなのでは……。
「複数の薬を処方されている場合は“どれをジェネリックにすればいいか”“新薬のほうがいいものはどれか”と、優先順位をつけてもらうイメージで尋ねてみるといいかもしれません。処方箋のなかにひとつでもジェネリック医薬品が含まれれば、それはジェネリック処方箋として扱われるため、薬局にとってもメリットがあるかたちで本音を語ってくれると思いますよ」
筆者も歯医者で親知らずを抜いた際、処方箋を持って薬剤師の方に相談したことがある。そのときの保険調剤明細書が上の画像だ。上段の抗生物質はジェネリック医薬品を指定し、下段の痛み止めは普段から使い慣れている新薬を出してもらった。ジェネリックに替えた抗生物質は、新薬と比べると1錠あたり13円ほど安くなっていた。薬価だけで単純計算すれば、1日3回、4日間の服用で、150円と微々たる節約。しかし、たくさんの薬を毎日常用しているような人にとっては、家計にも大きな違いが出てくることだろう。
「1円、2円の違いであれば、新薬を選ぶほうが無難だと思います。ただし、ジェネリックと新薬の価格差が大きいものはたくさんあり、前述の帯状疱疹に処方するバラシクロビル塩酸塩など、1錠あたり200円以上の差があるものもあります。“どれくらい価格差がありますか”と薬剤師に率直に尋ねるのも、ひとつの賢い方法ですね」
ほかにも、薬を選ぶうえで患者側が知っておくべき情報はあるだろうか。
「そもそも、その薬が本当に自分にとって必要なものかという意識は持っておくべきです。近年はポリファーマシー(多剤併用)についての問題も多く起こっています。たくさんの薬をもらうことで安心する患者さんもいまだに多いですが、飲み間違いや副作用の可能性も高まる。薬が多い方は、まず薬自体を減らしてもらうように医師と相談するべきだと思います」
どの薬を選択するかは患者側にある権利。さまざまな背景を理解したうえで、納得して薬と付き合っていく考え方が必要になっている。
●お話を伺ったのは
長尾和宏先生 医学博士、医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニック院長。年中無休の外来診療と在宅医療に従事し、『その医者のかかり方は損です』など著書多数
取材・文/吉信 武