おいしいからつい飲んでしまう
ところが、先述の商品パッケージやホームページには、暑さ指数のことが書かれていなかったり、発汗時だけでなく平常時にも適していると書かれたりしている。
「これでは、どんな場合も塩分補給したほうがいいんだと誤解する人がいてもおかしくありません」
しかも、日本人はもともとしょっぱいものが好きな人種。おいしいのでついつい塩入りドリンクを買って飲み、それを受けてメーカーも次々に新商品を開発……その結果、「熱中症対策に塩分補給」という認識がこれほど広まったのだろう。
「CMなどから、夏は塩が足りないというイメージを持っている人がいるようですが、それは間違っています。私たち専門医は、どうやったらメーカーの広告に影響されずに、塩入りの商品を控えてくれるか、苦慮しています」
日本人はそもそも塩分をとりすぎ
国立健康・栄養研究所の栄養調査によれば、20歳以上の日本人の1日の食塩平均摂取量はおよそ10g。アメリカやオーストラリア、韓国などと比べても多いことがわかっている。なお、WHO(世界保健機関)が推奨しているのは1日5g未満だ。
すでに食塩を10gとっている日本人が、塩あめや塩タブレット、塩入りの清涼飲料などをとれば、食塩過多はさらに進む。
塩分を必要以上にとり続けていると血管が傷ついて高血圧になり、自覚症状がないまま動脈硬化が進行する。怖いのは脳梗塞や心筋梗塞、慢性腎臓病など命に関わる病気になるリスクも高まることだ。
「高血圧でなくても、もともと心臓が悪い人が食塩をたくさんとって心不全になれば身体がむくみ、呼吸が苦しくなって命に関わることもあります。また、腎臓が悪い人は腎臓の働きがさらに悪くなり、人工透析が必要になることもありえます」