「売り方のプランニングで、なるほどと思えるような提案があったり、気をつけるべきところを丁寧に説明してくれたりと、親身に対応してくれるのがいい担当者。売却完了まで長く付き合うことになるので、相性が合わないと感じるならば、担当者を変えてもらうことも検討しましょう」
訪問査定が終わると、いよいよ不動産会社と媒介契約を交わすことになる。
「大きく分けると、複数の会社に売却活動を依頼できる“一般媒介契約”と専属の1社のみに依頼する“専任媒介契約”があります。専任媒介契約は、販売活動の進み具合を定期的に売り主に報告する義務があり、細やかにコミュニケーションをとれる環境も整うため、後者の契約のほうが売り主にとってはメリットが大きいと思います」
とはいえ、1社だけの専任契約では、物件情報を拡散して買い手を探すのに限界があるのではないだろうか。
「ほぼすべての不動産会社が利用する業者専用のレインズというデータベースがあり、専任媒介契約はそのレインズに物件情報を登録する義務が生じます。登録情報をもとに別の不動産会社も広く買い手を探せるようになっているので、物件情報の囲い込みを防ぐためにも、契約後はレインズへの登録証明書を必ず確認させてもらいましょう」
所有物件の相場を知る重要性
媒介契約後は、必要に応じて測量や土地境界の確定、確定測量図をつくるなど、売り出しまでに担当者との細かい打ち合わせが生じる。
「土地境界の確定には隣接する土地所有者全員の承諾が必要で、その交渉を遅滞なく進めることが重要になってきます。また、例えば敷地内に防火水槽などがある場合、それが買い手にとっての懸念点にならないよう、まず取り出してから売り出しましょうといった物件の弱みを解消できる戦略を提案できるかどうかも、担当者の力の見せどころです。これらの内容をもとに売り出し価格を決めますが、中古物件には価格の交渉もつきもの。ある程度の値引き価格も想定したうえで、納得のいく金額を相談しましょう」
売り出し価格が決まれば、販売活動がスタート。内覧の申し込みもあるため、物件の掃除なども欠かせない。
「内覧は、とにかく第一印象が重要。室内の照明は全部屋つけておき、明るいイメージを演出するだけで印象はガラリと変わります。特に見学者様が気にされる水回りをきれいにしておくと好印象です。引っ越しの準備も兼ねて、家財道具の整理や掃除を進めておくことは大切ですね」
購入希望者が現れたら、契約条件を調整し契約の準備に入る。必要な書面の確認や手続きなど、煩雑な作業も多いため、ここでも担当者のサポートが不可欠だ。
「売却は、価格・期日・諸条件の3つをしっかりと納得したうえで決断する必要があります。価格はもちろん、引き渡し期日が買い手・売り手の双方で折り合うか、エアコンなどの設備を残してほしいといった細かな諸条件を受けるかどうかなども、売買成立に直接関わってきます」
こうして流れを追ってみると、やはり最初の不動産業者選びが命運を分けるといっても過言ではない。これまで数々の売り主と対峙してきた山本さんに、最後にお得にマイホームを売り抜ける人の特徴について教えてもらった。
「自分の物件の相場を知っておくことは重要です。基本的な知識を身につけている賢い売り主さんには、ウソやごまかしは通じないので、“プロとして満足してもらえるように頑張ろう”と担当者も奮い立つものです。また、全体のスケジュールに余裕を持って売却を考えているかどうかも大切。売却を焦って足元を見られないように、計画的に進めることが重要です」
ライフプランを考えるうえで重要なマイホーム。余裕を持った計画こそが、何より損をしないコツとなる。