新型コロナによる「コロナうつ」もニュースとなった。日本うつ病学会によれば、コロナの自粛によって人との接触が極端に減り、会社や学校などにも行かず、さまざまな我慢を強いられたストレスが積み重なり、引き起こされるという症状だ。
「人と会わなくなったから」「外に出なくなって興味を向けるものが減ってしまったから」などもっともらしい理由があるせいで、症状に気づけていないことも多いという。
右の漫画のように、何かがおかしい気がしても「たまたま失敗が続いているだけ」「疲れているだけ」と自分をごまかし、「ほかの人はできているのだから自分が悪いんだ」と思い込んでしまうことがある。
心療科を持つ多くの病院が「該当する症状が一定期間続くのであれば一度受診を」「悪化する前に専門家へ相談を」とホームページで警鐘を鳴らしている。
しかし、違和感を感じても病院に行かない理由は、自分がうつ病であることに気づかない、だけではない。これまで話してきたような精神科、精神科病棟へのマイナスのイメージが二の足を踏ませている可能性がある。
「私もうつ病の疑いがあると感じながらも病院へかかることを避けていました。
このくらいの仕事量はプロの漫画家ならこなして当たり前だ、と自分に言い聞かせて頑張る毎日。うつ病は弱い人間がなるただの“怠け病”だという偏見を持っていましたし、病院に行くこと自体に大きな抵抗があったのです」
その後、後で結婚する当時の恋人から背中を押され、ようやく精神科を受診。通院と服薬による治療を受けることとなったが、「うつ病を治しても元の自分には戻れない」という絶望感にさいなまれ、自殺を図るほどまでに悪化してしまったのだった。
退院してからは約2年で薬がゼロになり、その後も約2年、通院を続けた錦山さん。治療開始から通院終了までトータル5年半かかったという。
「『たいしたことない』という自己判断で悪化させるのは、うつ病に限ったことではないかと思いますし、『うつ病は心の風邪だ』と表現する医者もいますよね」
つまり、そのくらい誰でもかかる可能性があること。
「悩んでいるなら、まずは病院に行ってほしいですね。そもそも病気なのか、治療が必要なのかは医師が教えてくれますから」と、錦山さんは力強くそう言う。
うつ病に限らず、精神科のドアを開けることでそれまで何となく引っ掛かっていた悩みの問題が明確になるかもしれない。何より、自分自身との折り合いをつけるきっかけにもなるはずだ。