「そこには日々の業務の記録から、女性と会った日付、食事をした店名、さらにホテルに行った時間まで事細かに記されていたんです。先月、夫が広島に出張と言って出かけた日には、『箱根温泉』とまで書かれていました。浮気相手は、『R』とイニシャルだけしか記されていなかったので、どこの誰かはまったく見当もつきません。若いころから、読んだ本や鑑賞した映画を記していた夫らしいといえば、『らしい』のですが……」
あまりのショックで寝込んでしまった恵子さん。ときには起き上がることもできず、パートも休みがちになってしまったといいます。
「私が寝込んでいた時期、夫の帰宅時間が徐々に遅くなりました。泥酔して帰ってくることも増えていきましたね。酔った勢いで『こんなババアと生活するなんて、俺の老後は真っ暗だ!』と暴言を吐かれたこともあります。娘も父親の様子に怯えるようになってしまいました」
大泣きしながら探偵事務所に連絡
やがて夫の隆さんからは、次の「出張」の予定が告げられました。なんとか起き上がることができるようになった恵子さんは、藁にもすがる思いで探偵事務所を訪れたのです。
「何度も調査をするかどうか、気持ちは揺れました。『私が探偵に相談したことがバレたら、夫はどう思うだろう』『もし私の勘違いだったら……』と何度も逡巡して、その度に大泣きしながら探偵事務所に連絡してしまいました。でも真実を知りたいという気持ちが勝りましたね」
前出の岡田さんは、語ります。
「『少しでも早く今のつらい状況から脱したい』と思ってしまうものですが、配偶者の不倫で傷ついている最中は正常な判断ができなくなるもの。恵子さんのように何度も揺れる相談者さんは少なくありません。
私たちも、単に不貞の証拠を集めるたけでなく、自分は今後どうしたいのか、夫婦の問題は何なのか、カウンセリングをして、心の整理をしていくことをオススメしています。なにより弱っているときは、大きな決断はしないこと。とくに離婚となればその後の住まい、子どもの人生のこと、生活がしていけるかどうか……など自活のイメージもゆっくりシミュレーションしてみましょう」
恵子さんも岡田さんのアドバイスにより、カウンセリングを受診。そこでこれまでの夫婦生活を振り返ったといいます。第三者に話すことで、夫のモラハラ気味な性格についても明らかになりました。
そしていよいよ迎えた「出張」当日。
「夫から告げられた出張先は、大阪でした。横浜の自宅からは、あまりにも長距離でしたが、関東と関西それぞれの調査員の方が連携して尾行してくれたそうです。結果的に不倫相手の自宅まで割り出してくれましたね」
不倫相手はなんと隆さんの学生時代の元カノ。数年前の同窓会で再会して再燃し、W不倫状態だったことがわかりました。
「調査結果を聞きに探偵事務所に伺ったのですが、ホテルから出てくる二人の映像を見たときには、『このままビルの屋上から飛び降りてしまおうかな』とすら考えてしまいましたね。しかしすぐさま『私には娘がいる。この子を残しては死ねない』と思いとどまりました」