9月15日に、「ゲノム編集食品」としては初めて、高GABAトマトの販売が始まりました。栽培した際の環境への影響、食品になった際の安全性は確認されないままでの販売です。
食卓に上がるゲノム編集食品
このトマトを開発したのは筑波大学の江面浩教授で、同教授が立ち上げたベンチャー企業のサナテックシードが5月に栽培を開始し、一般向けにも苗の無償配布を始めました。そして収穫されたトマトの販売が始まったのです。
販売を行っているのは、同社の親会社であるパイオニアエコサイエンス社で、同社は年内にこのトマトを加工したトマトピューレを販売することにもしています。
ゲノム編集食品は、「ゲノム編集技術」を用いて作り出された食品です。その技術とは、さまざまな遺伝子で成り立つDNAを標的とする場所で切断して、遺伝子を破壊する技術です。
そうして破壊することにより、特定の物質を増やす操作が行われています。トマトでは「GABA」という成分を増やしていますが、これは血圧を下げるなど健康にいいとされる物質です。
外国に目を転じて見ると、いまゲノム編集作物として栽培が行われているのは、米国での高オレイン酸大豆だけです。その大豆を原料に食用油が作られています。これも健康によい脂肪酸のオレイン酸を増やしたことが売りになっています。最初に登場したゲノム編集作物は、人々の健康志向に合わせたものといえます。
日本ではそのほかにも、収量の多い稲や有害物質を含まないジャガイモが、茨城県にある農研機構の圃場(ほじょう)で栽培試験が行われている最中です。
これに続いて、登場することになったのが魚のマダイです。厚労省は9月17日に専門調査会で、市場への流通にゴーサインを出しました。
ゲノム編集技術で肉厚にしたマダイで、開発したのは京都大学の木下政人准教授と近畿大学の家戸敬太郎教授です。この2人は共同でベンチャー企業のリージョナルフィッシュ社を立ち上げ、同社が養殖・販売を行います。
魚の開発は、ほかにも佐賀県唐津市にある九州大学の養殖場で大賀浩史助教が養殖しやすくしたマサバを誕生させ、長崎市にある国立の研究機関の養殖場で樋口健太郎研究員らが、同じく養殖しやすいマグロを誕生させています。
さらには徳島大学の三戸太郎准教授と同大学発ベンチャーのグリラスが、成長の早い食用コオロギを開発しています。このようにさまざまな作物や動物食品の開発が進められており、これらが続々と食卓に登場することが予想されます。