副作用のリスクのほうが高い人も

「私のところに届くワクチンに関しての悩みは、1つが“打とうか打たまいか”悩んでいる。出来て間もないワクチンだということは皆さん知っていますから、副作用が心配でどうしたらいいのかわからない。もう1つは、自分は“打たない”と決めているけど、周りからの同調圧力が強くて悩んでいる。これは意外と家庭内のものも少なくありません。あとは授乳中であったり子育て中のママさんから悩みも多いです」(岡田先生)

 ワクチン接種に悩む人に、どのような言葉をかけるのか。

「前提として、医療相談というのは法律的にやってはいけない行為。対面で診察をしていないと判断やアドバイスをしてはいけません。 “ワクチンを打つべきかやべるべきか”という質問に対しては、“どうしなさい”ということは決して言わないことにしています。

 打つことのメリット、打たないことのメリットはそれぞれ自分の体質や環境によってまるで違う。住んでいる市区町村によって感染者数はまったく違う。そういったことをもろもろ考えた上で、打ったほうがプラスになるのか、打たないほうがプラスになるのかは、占いのようなもので、第三者にはわからないこと。

 そのため“ご自分でご判断ください”という言い方に統一しています。メールや電話だけでなく患者さんからも同じようなことを聞かれますが、同じ答えをしています。あくまで法律上任意ですから、第三者が言うべきではないということはご理解くださいと」

 欧米では参考になるような研究やデータが発表されているという。

「8月31日付けで発表されたアメリカの論文があります。“過去にアナフィラキシーを起こしたことがある”、“複数の薬に対してあきらかなアレルギーがある”、“蕁麻疹(じんましん)や喘息など複数の異なるタイプのアレルギー疾患がある”などを満たす429人に、ワクチンを接種してもらい、追跡調査を行ったものです。倫理委員会の許可を取り、もちろん参加者に同意をもらった上でのものです。日本ではこういった研究はまったくと言っていいほどありません。

 この結果2回ワクチンを接種した人の3人にアナフィラキシーが起こった。割合にして0.7%です。これを多いと見るか少ないと見るか……」

 ワクチンの接種に関して、“たまに重症のアナフィラキシーが起こるけど、ごく稀なものだから心配いらない。それよりコロナのほうが怖いでしょ?”という意見・論理の人が多い。

「確かに母数が、“過去にアナフィラキシーの経験がある”というような特殊な人たちなので、そのわりに0.7%は少ないんじゃないかとも言えます。ただ、多いか少ないかは第三者が言うべきことではなく、もしかしたら自分がその1人かもしれない。この試験では、専門医がそばに控え、万全の処置ができる態勢を整えていたことから幸い亡くなった人はいなかったですが、アナフィラキシーとは大変危険な状態です。私はこの数字は多いと考えます。

 コロナの感染は、ほぼ同居家族以外との飲食で起こっていることがわかっています。つまり、それをしていない人の感染リスクは限りなくゼロに近い。一方ワクチンを受けることのリスクは、1つ1つは稀ですが、さまざまなリスクを全部合わせると決して稀ではないことがわかっている。そのリスクと天秤にかけて自分で判断すべきだと思いますが、感染するリスクが極めて低いような人は、ワクチンによる副作用のほうが大きいと考えます」