ワクチンとお口のケアが大事

 誤嚥性肺炎の予防として、まずは「肺炎球菌ワクチン」の接種をしてほしいと大谷先生は言う。

「肺炎の原因となる細菌やウイルスはたくさんありますが、口の中にいる肺炎球菌は誤嚥性肺炎の原因になりやすいです。65歳以上の高齢者には、自治体から肺炎球菌ワクチンの接種費用の助成があるので、発症や重症化を防ぐためにも、ぜひ受けてほしいと思います

 肺炎球菌ワクチンには2種類あり、厚生労働省が65歳以上の高齢者に定期接種を実施しているのは、「23価肺炎球菌ワクチン」というもの。効果は5年以上持続し、1回に限り、接種費用の一部を公費で負担してもらえる。対象になる年齢の人にはお住まいの自治体から案内が届くので、見逃さないようにしたい。

 いっぽうの「13価肺炎球菌ワクチン」は、子どもに定期接種されているが、大人も任意で受けることができる。ただし、こちらは自治体からの補助がないので、希望する場合はかかりつけ医に相談を。

「ワクチン接種に加えて、歯磨きやフロスなどの口腔ケアも大切。口の中の細菌を減らすことも誤嚥性肺炎の予防に効果的です。また、異物を誤嚥した際にせきをして異物を吐き出すための『せき反射』も重要。小さな脳梗塞でもせき反射が低下するので、脳梗塞のリスクになる高血圧や糖尿病、脂質異常症の予防も大事です」

のどを鍛えて誤嚥を防ぐ

 食べ物をゴックンと飲み込めれば誤嚥しにくくなるので、誤嚥性肺炎の予防には「飲み込む力」を高めることも有効だ。のど周辺の筋肉を鍛えることで強化できる。のどの筋力は60代以降になると急激に落ちるが、毎日トレーニングすることで筋肉を増やすことができる。

「筋肉はいくつになっても鍛えられるので、中高年はもちろん、高齢者でも、のどトレーニングでのどの筋力をアップさせれば飲み込む力の改善が期待できます」

 食べ物が飲み込みにくくなるのには、唾液量の減少も関係しているという。

 よくかんで食べると唾液の分泌が促される。また、唾液腺のあるところをマッサージするのもいい。

 次に紹介するトレーニングは、唾液量を増やすためのマッサージや、のど周辺の筋肉を鍛えるもの。30秒程度でできるので、ぜひ試してほしい。のど年齢が落ち切っていない50代から始めると、のど年齢をより若くキープできるのでおすすめだ。

 年をとっても誤嚥せずにいられれば、食事を楽しめ、生活の質を高く保つことができる。誤嚥性肺炎を防ぎ、健康長寿を目指すためにも、30秒あればできるのどトレをいまから始めたい。