昨年8月に公開された西島秀俊主演の映画『ドライブ・マイ・カー』が、日本映画としては62年ぶりとなるゴールデン・グローブ賞を受賞するなど、快進撃を続けている。
「原作は村上春樹さんの同名の短編小説。世界的注目を集める新進気鋭の濱口竜介監督が、チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』などを織り交ぜることで登場人物を掘り下げ、3時間の長編に仕上げています」(スポーツ紙記者)
日本映画初のアカデミー賞ノミネートもほぼ確実と言われているだけに、ロケ地への関心度も高まるばかりだ。
「原作では東京が舞台でした。しかし、東京では満足できるドライブシーンが撮影できないと韓国の釜山でのロケを予定していたところ、新型コロナの感染拡大により、釜山での撮影を断念。広島がメインのロケ地に選ばれました。国内外の映画賞を総なめにしたことで、県内のロケ地を訪れる人が増えています」(ネットニュース編集者)
広島フィルム・コミッションの担当者に、ロケ地になった経緯を聞くと、
「国際演劇祭が行われている設定とあり、製作側はイメージに合う何都市かをピックアップしていたようです。ロケハンに来られた折に、どこか面白い場所をと言われたので、劇中でも使用された“中工場”と呼ばれるゴミ処理施設にお連れしました」
ロケ地のマップ閲覧数が4倍に
同施設は広島平和記念資料館本館や原爆ドームと同じ“平和の軸線”上にあり、そのエピソードが決定打に。
「ゴミ処理施設にまでそのようなエピソードがあることが、映画の軸となる国際演劇祭が行われる“文化の街”にふさわしいと思われたみたいです」(同・担当者)
反響については、
「デジタルロケ地マップの閲覧数が、ゴールデン・グローブ賞の受賞後は3~4倍に伸びています」(同・担当者)
映画ライターのよしひろまさみちさんは「瀬戸内海の風景が、主人公の心情表現にマッチしていた」と絶賛。
「主人公は妻を亡くした傷を隠しながら演劇祭に向かいます。自分を保つためにも表向きでは“凪”を装う主人公と、“瀬戸の夕凪”で知られる瀬戸内海の景色が見事にハマっていましたね」
加えて、海外市場を見越していたのではと分析する。
「瀬戸内海でも香川や岡山は、海外の人からはピンときません。しかし、広島は世界的に知られた地名ですからね。また、中国地方で唯一の100万人都市のうえ、文化事業に力を入れていることもあり、演劇祭を開催するという劇中の設定にも説得力が出ています」(よしひろさん)