手書きメニューを作成してくれるサービス
メニュー書きの特別な講座というのがある?
「いえ、特にそういったものはないのですが、小筆を習うことで自信を持って書けるようになったら、自分で書こうという方が多かったです」(上平さん)
実際、講座ではどんなアドバイスをしていたのだろう。
「書く人に合った、字の整え方ですね。書道を習っていなくてもセンスよく形をまとめて、見た人が“かっこいいな”という字を書ける人もいます。でも、それができない人には“あなたの書く線はここが魅力なので、こうしたほうがいい”とアドバイスをします」(上平さん)
書道を教える側から見て、毛筆で書かれたメニューはどう映るのだろう?
「字に興味がある人が見たら、その店のやる気や繊細さなど、来店するお客さんにお伝えしたい気持ちの“重さ”みたいなものが表せるメリットがあると思います」(上平さん)
もともと毛筆で字が書ける人、そうなりたいと習う人。メニュー書きにもいろいろとパターンがある。このほかには、「業者に頼む」という選択もある。
ネット上で検索すると、「手書きのメニューを制作します」というサービスを提供する人たちがヒットする。主婦が副業として手書きをするものから、書道のプロが書き上げるものまでさまざまだ。そんな中で、
「1か月に1~2件のオーダーを受けます」
と話すのは、名前と誕生日の花を掛け合わせる書道アート『虹墨記念花アート』の主宰で、書道家として活動している、なすご龍芳さん。
「手書きの“味”を求めている人は結構いるのだな、と思います」
居酒屋や小料理店などのメニューや、店のロゴなどのデザインも手がけているという。その仕事の流れは?
「まず、メニューの雰囲気はこんな感じ、という打ち合わせをします。そのデザインが固まりましたら、メニューの文字データを送ってもらい、その文字をイメージしたデザインで書き上げていくという流れです」(なすごさん)
また、書き上げる字の雰囲気もそれぞれの店で変えているという。
「お店が大衆店なのか小料理屋なのかなど、お客さんの層によって書体を変えています。小料理屋だと高級感を出すため、字の角度をちょっと上げめにするとか、漢字より仮名を多く使うなど。
メニューでそのお店の高級感が変わってくると思うので、そこはこだわりますね。きれいな字でなくても手書きなら、気持ちは伝わるかもしれませんが、いらっしゃったお客さんに“安い店なのかな”と思われてしまうかもしれません。メニュー書きにこだわるということは、ある種のブランディングだと思います」(なすごさん)