著書の『食品の裏側2』で詳しく書きましたが、私は「塩分」「油分」「糖分」を「恐怖のとりすぎ3兄弟」と名付けました。いまの日本人の食生活では、知らず知らずのうちにこの3つをとりすぎてしまうのです。
「日本人の体を壊す『隠れ糖質』とりすぎの深刻盲点」、および「日本人の体を壊す『隠れ油とりすぎ』の深刻問題」にも記しましたが、添加物や「〇〇エキス」などの力、あるいは味付けのバランスの妙で、ふつうならとても摂取できない量の「塩分」「油分」「糖分」も、舌が麻痺して摂取してしまうのです。
つまり「甘すぎる」「油っこい」という舌のセンサーが働かず、ついついとりすぎてしまう傾向にあるわけです。高級食パン、菓子パン・デニッシュ類などは「隠れ油分」「隠れ糖分」の最たるものだと私は思います。
「安部ごはん」VS「高級食パン」
いずれにせよ、「高級食パン」は、いま流行りの「糖質オフ」「カロリーオフ」とは完全に逆行したものといえます。
私が不思議で仕方がないのは、「ご飯は糖質が多いから」「和食は砂糖を使うから」といって避けるのに、高級食パンは並んでまで買って喜んで食べるという、その消費者行動・消費者心理です。
もちろん高級食パンも「たまのお楽しみ」に食べる分には問題ないでしょうが、ひんぱんに食べるのにはいかがなものでしょうか。
そうでなくても、ただでさえパンに「油分」「糖分」がたっぷり入っているのに、パンに合う副菜も、往々にして「油分」「糖分」が多くなりがちです。朝食だけでもベーコンエッグ、ソーセージ、コーンポタージュ、チーズ、フライドポテト、チキンナゲットなどなど……。
それに比べれば、白いご飯には「砂糖」も「油分」も入っていません。もちろんご飯には糖質があるけれど、納豆、焼き魚、野菜たっぷりの味噌汁といった、和食の副菜なら「油分」「糖分」はグッと控えめで済みます。
『安部ごはん』で紹介している和食も、一般的な洋食に比べて「脂質」「糖質」はグッと控えめだと思います。毎日食べるならやはり和食が一番だと、私はつくづく思います。
「朝は忙しいから、食パンが便利なんだよ」と言う人もいるでしょうが、その場合は、それによって、大人も子どもも「隠れ油分」「隠れ糖分」を同時に摂取しがちなことを、よく「知って」食べてほしいのです。「便利さ」「手軽さ」を追求することには、「メリット」だけでなく「デメリット」もたくさんある、ということです。
みなさんも、「食パン」を食べるなら、ぜひ「隠れ油分」「隠れ糖分」に気をつけて、1日のトータルでバランスを取っていただきたいと願います。
安部 司(あべ つかさ)Tsukasa Abe
『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事
1951年、福岡県の農家に生まれる。山口大学文理学部化学科を卒業後、総合商社食品課に勤務する。退職後は、海外での食品の開発輸入や、無添加食品等の開発、伝統食品の復活に取り組んでいる。NPO熊本県有機農業研究会JAS判定員、経済産業省水質第一種公害防止管理者を務めつつ、食品製造関係工業所有権(特許)4件を取得。開発した商品は300品目以上。2005年に上梓した『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)は、食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、70万部を突破するベストセラーに。その他の著書に『食品の裏側2 実態編 やっぱり大好き食品添加物』(東洋経済新報社)などがある。