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ー 久しぶりの実家は、“汚部屋”に

 

 誰もがぶち当たる「親の介護と死」。それは女性有名人たちも同じようだ。病老介護を余儀なくされた堀ちえみ、コロナ禍で思うように看取れなかった阿川佐和子ー。葛藤や後悔を語る彼女たちに共通するのは親への感謝と深い愛。今回は、現在まさに親の介護に追われているお笑いタレントのにしおかすみこ編。認知症の母親と家族との壮絶な同居生活、感情を露わにしてしまうこともあるそうでーー。

久しぶりの実家は、“汚部屋”に

 SMの女王様芸で一世を風靡したお笑いタレントのにしおかすみこは、現在進行形で介護と向き合っている。認知症を患う80歳の母を含め、ダウン症の姉、“酔っ払い”とにしおかが称する父の4人で生活しながら、母の介護を担っており、その様子を描いたエッセイが話題に。

 同居のきっかけは、コロナ禍で1年ぶりに実家に帰ったこと。久しぶりに会った母は、埃だらけ、生ゴミ臭が充満した部屋で平然と過ごしていた。その異様な母を娘として放っておけない。しかし、まずは掃除をしようと思い立ち、砂埃が蓄積しているカーペットを取り替えようとするも、「余計なことするんじゃない! 偉そうに!」と母とは思えない声で怒られる始末。

 さらに、同居を始めると、汚部屋だけでなく、宅配サービスへの大量注文、さらにその支払いを3か月も滞納していることが発覚。大量の食材を無駄にしないために作り置き料理を用意したが「知らないものだから食べないさ!」と、冷蔵庫から放り出された。

 またある時は、朝から誰かに電話をかけ、にしおかが“麻薬をやっている”、“いかがわしい宗教に入っている”と、デタラメを吹聴。お金の管理を心配して通帳を預かれば「ドロボー!」と部屋に怒鳴り込まれた。エッセイでは、そんな母に対して感情のまま「勝手にしろ!」と怒鳴っては、悔やむ姿が赤裸々に綴られる。

 しかし、さまざまな介護者を見てきたNPO法人「UPTREE」代表の阿久津美栄子さんは、そんな遠慮ない感情の吐き出し合いこそ、介護には必要だと断言する。

「感情を抑制したままだと、死別したときにそれが後悔となり、悲しみから抜け出せない場合が多い。本音のぶつかり合いを恐れたり悔やんだりする必要はないのです」

 認知症で噛み合わない会話のなか、ふいに見せる昔の母の面影に涙し、ほっこりした気持ちに戻る場面も。辛苦も笑いに変えるのがお笑い芸人なのだ。