亡き2人に見守られ、不思議な縁に導かれる
小百合さんには、もうひとつ、悲しい別れがあった。
「10代で出会い、結婚の約束までした人がいて。親の反対や、一方がひとりのときは一方が結婚、とすれ違いが続き、一緒にはなれませんでした。でも、つかず離れずの友達関係は続き、折に触れて相談に乗ってもらっていたの。
私の末娘と彼の娘さんが同い年で、“娘が20歳になって親の責任から解放されたら一緒に暮らそう”と言ってくれていたんです。秘かにその日を夢見ていたのですが……その前に彼は心筋梗塞で突然亡くなってしまいました」
しかし、その後、小百合さんの周りで、いろんなことが動き始める。
「彼が哲夢と2人で夢に出てくることが何度もあって。そして現実でも、2人が“僕たちがついているよ”と後押ししてくれているような力を感じることが度々あったのです」
そのひとつは、アメリカで妹を見つけたことだった。
「アメリカ軍人だった父は、母と私を置いて帰国したため、私には父の記憶がなく、どんな人かも知らなくて。2002年にテレビ番組の企画で、生き別れの父を捜し出す旅に出たのです。残念ながら父は亡くなっていたけれど、父の再婚相手の娘、つまり私の妹を見つけることができたんです。
さらに父の弟、妹、私にとっては叔父や叔母を発見。それまで自分に妹や叔父、2人の叔母がいることを知らなかったから、もやもやしていた私の半分のルーツがわかって、うれしかったですね。叔父は4年前に亡くなりましたけど、生前には麻衣の結婚式にも来てくれて。交流できたことは幸せでした」
さらに、かねて「ぞうの楽園」をつくりたいと思っていたところ、勝浦に土地が見つかり、ある動物園から「老齢のゾウを引き取ってほしい」との要請もあり、『勝浦ぞうの楽園』をオープンさせた。
「それで『ぞうの楽園』がメディアで紹介されたことで、出版社の方から“本を出しませんか”と声をかけていただいて。それが『星になった少年』の原作となった本です。出版されると反響を呼び、すぐに映画化の話が持ち上がったんです」
まさに、とんとん拍子に事が運んでいく。
「ちょうどそのころ、カンヌで主演男優賞を取った柳楽くんの第一報がテレビで流れていたの。彼の目力に惹かれ、“哲夢の役は、この子がいいわ!”って。すぐに映画のプロデューサーに電話をかけたら、“僕も今、見ていました”と意見が一致。配役が速攻で決まりました。
これだけ偶然が続くと、やっぱり天界で哲夢と彼が手を組んで、私のために動き回っているとしか思えないんです」