「息子は幼稚園まで、お友達のことをあだ名や“ちゃん付け”で呼んでいたのに、小学校に上がったとたん、名字に“さん付け”で呼ばなければいけなくなったんです。クラスメートをあだ名で呼ぶのも、呼び捨てにするのも禁止という決まりがあるから……」
そう話すのは神奈川県在住のY美さん(40代女性)だ。今年で8歳になる息子は小学校への入学当初、「あだ名禁止」のルールに困惑していた。
「いじめにつながるような、変なあだ名をつけるのは論外ですが、一律に禁止してしまうことには違和感があります。子どもから“なんでダメなの?”と聞かれたとき、うまく答えられませんでした」
あだ名禁止の背景
いじめ防止の観点から、子ども同士があだ名で呼ぶのを禁止する動きが小学校で広がっている。いじめ問題に詳しいジャーナリストの渋井哲也さんは、この傾向は10年ほど前から見られるという。
「学校であだ名を規制する動きが出てきたのは、重大ないじめに対し学校側に調査義務を課した、『いじめ防止対策推進法』が作られた2013年前後のことです。
ただ、あだ名といじめを関連づけて考えること自体は、いじめ自殺が社会問題として注目された1990年代後半から行われていました。特に影響が大きかったのは、2006年に福岡県・筑前町で起きた中学生男子のいじめ自殺。教師が生徒に“偽善者”と言うなど問題発言を繰り返し、それをきっかけにクラスメートが男子生徒にあだ名をつけ、いじめるようになり、自殺に追い込まれたんです。文部科学省が調査のため現地入りするほど大きな問題になりました」
そうした背景から、あだ名がいじめにつながるおそれが指摘されるようになった。とはいえ、文科省が直接、学校に指導を行っているわけではない。あだ名に関するルール作りや対応は各学校によってさまざま。校内にいる間だけ「あだ名禁止」の場合もあれば、授業中に限り「さん付け」を推奨、昼休みなどの休憩時間は規制を設けないケースも。
こうしたルールを、子どもたちはどう感じているのか。