ナメクジが媒介する広東住血線虫(かんとんじゅうけっせんちゅう)という寄生虫が体内に入ると、死に至ることもある。料理に混入したナメクジを、もし客が食べたら……と思うとゾッとする。
「人の命に関わることなのですが、店長は“ナメクジはしょうがない”と言うだけ。『ファイブエム商事』の幹部に衛生面の改善について掛け合ったのですが、変わらない。『大阪王将』の本部は衛生監査を毎年行いますが、問題があっても“改善するように”と指示するだけ。保健所の検査もザルです。これじゃあ何の意味もない」
だったら自分で変えるしかない。そう考え、男性は懸命に働いた。
「アルバイトに清掃方法を教えたり、ひとりで掃除をしたり……。本当にいろんな努力をしましたが、問題が多すぎて、改善することが全然できなかったのです。掃除していたら、店長から“掃除より食材の仕込みをやって”と言われたこともありました」
ただ、告発の発端は会社への強い“恨み”なのだという。
「従業員を人とも思わない会社を許せなかったんです。レジのお金が足りないときはアルバイトに自腹で補填させたり、労働時間を50時間ほど少なく改ざんされたり……。これまでのことがあったので『大阪王将』本社と保健所に言っても無駄だと思い、自らの口で伝えようとSNSで告発したのです」
衛生面以外にも、さまざまな問題があると男性は主張する。事実確認のため、『ファイブエム商事』を訪ねたが、
「調査中のため答えられない」
と話すだけ。同社社長に話を聞こうと自宅を訪ね、インターホンを押したが応答はなかった。
保健所が衛生検査に入ったが…
この告発で、店舗は休業。保健所が衛生検査に入った。仙台市保健所生活衛生課は、
「25日に、ツイッターの投稿を見た方から連絡を受けましたので、抜き打ちでの検査を行おうと思ったのですが、店舗が休業していたため、運営会社に連絡し、立ち合いのもと検査をしました。ナメクジやゴキブリは現認できませんでしたが、清掃の不十分な場所が多々見受けられたため、改善するよう指導しました」
害虫が確認できなかったというのは、男性の主張と食い違うけど……。これについては民放報道記者が説明する。
「男性は24日の日曜日にツイッターで告発しましたが、保健所が事態を認知したのは25日の月曜日。その間に運営会社は店舗を清掃したようなのです。公的機関が害虫の多発する劣悪な衛生環境を確認していれば、もっと大きな問題になっていたはず。会社側に時間的な余裕を与えてしまったことはマイナスでした。ただ、運営会社も社会的制裁は十分に受けたと思います」
一方で、利用客たちはどう思っていたのだろうか。
「1度だけ食べに行ったけど、味は普通で汚いとも思わなかった。でも、うちの家族は“マズイからもう行かねぇ”って話していました」(40代男性)、「最近食べたけど、不衛生だとか、マズイとかは感じなかった」(70代女性)、「しょっちゅう食べに行ってたけど、おいしかったですよ」(30代男性)、「月に数回は利用するけど、問題があるとは思ったことがない」(50代男性)と、意外な声が続々……。
問題だったのは、利用客に見えない“裏”の部分。気がつかないこともあるだろう。しかし、今度は提供された“料理”に問題がある、新たな火種が燻っている。