病気になってものまない薬:睡眠薬
風邪薬と同じように、強い依存性が社会問題となっている薬がある。
「ベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬には強い依存性があり、依存症から抜けられなくなっている人が大勢います。それなのに、あまりにも簡単に処方されすぎています」と、谷口先生は危機感を募らせる。
ベンゾジアゼピンおよびその類似品にまつわる恐ろしい事件や事故は、山ほどあるという。
「2012年に東京都の目黒区で、『マイスリー』という睡眠薬を内服していた42歳の母親が、薬のせいで意識のないまま5歳の息子をビニール袋に入れて窒息させて殺すという痛ましい事件がありました。にもかかわらず、この薬は日本国内で最も多く処方されている睡眠薬といわれています。
中には『いちばん弱い睡眠薬だから』などと説明されたという患者さんもいて、医師が危険性を十分に説明して処方しているのか、はなはだ疑問です」(谷口先生)
病気になってものまない薬:コレステロールの薬
多くの中高年の心配のタネとなっている、コレステロール値。しかし、寺田先生によると、健康診断などで使われるコレステロール値の基準自体がそもそも疑問だという。
「LDLコレステロールの値を下げるスタチン系の薬をのむのは避けたいですね。LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれますが、胆汁酸やホルモン、ビタミンDなどの大事な原料になるからです。
実際、アメリカでは2015年にLDLコレステロール値の上限が撤廃されています。日本では140mg/dL以上で脂質異常症と診断されますが、私は高齢や持病などのリスクのある患者さんを除いて、160~170mg/dL程度を上限値に設定しています」
水上先生も、寺田先生の意見にうなずく。
「ある日本人の追跡調査によると、総コレステロールが250mg/dL程度がいちばん長生きだったという結果も出ています。なので、私だったら抗コレステロール薬はのみたくないですね」
病気になってものまない薬:糖尿病の薬
糖尿病の患者数は、予備群も含めると1000万人を超えるともいわれている。身近な病気なので、薬を常用する人も少なくない。
「糖尿病薬の中でも、血糖を下げるインスリンというホルモンを膵臓から分泌しやすくするSU剤という薬は、安価で血糖値も下がりやすいといわれます。一方、強い空腹感に襲われるため肥満につながる場合も。
また、膵臓を雑巾のようにギュッと絞ってインスリンを出させる働きがあるため、長期間の服用で膵臓がボロ雑巾のようになってしまう可能性もあります。もともと糖尿病で過労状態の膵臓に、さらにムチを打つようなことになるからです」(寺田先生)
では、血糖値が高くて何らかの薬をのむ必要に迫られたときには、どんな薬をのめばいいのだろうか。
「GLP-1製剤はわりといいですが、ひどい吐き気と食欲不振に襲われることも。糖を尿とともに出すSGLT-2阻害剤は、膵臓への負担も少ないので、私ならそちらをのみたいですね」(寺田先生)