企業の社長も“〇〇ちゃん”呼び!

 もともとは「引っ込み思案だった」という玲子さん。その性格が変わったのは短大生のころだという。

「高校生までは、まじめでおとなしくて。周囲に溶け込めず、いじめられたこともありました。でも短大生のころ、父親が立ち上げた渋谷109ブランド『ココボンゴ』でバイトを始めて、カリスマ店員と呼ばれるようになったんです。にぎやかな職場で、人と話す練習になりました」

ブランド「ココボンゴ」のカリスマ店員時代の永峰玲子さん(撮影/伊藤和幸)
ブランド「ココボンゴ」のカリスマ店員時代の永峰玲子さん(撮影/伊藤和幸)
【写真】玲子さんと楓音ちゃんの食事、形状は違えど同じものを

 '90年代半ば、ファッションブランドの販売員がブームを牽引した時代。“渋谷109のカリスマ店員”はその象徴的な存在だった。

 雑誌ではタレントのような扱いで特集が組まれ、カリスマ店員が着た服は即完売。年始の福袋は1日1000万円近くの売り上げを記録するほど客が行列をつくったという。

「必死でしたね。トイレに行く時間もないほど、1日中接客して、レジ打って。街を歩いていると、“サインください!”って声をかけられたり、キャーッて泣かれたりしたこともありました」

 短大を卒業後も、そのまま父親の会社で6年間勤務。商品開発なども担当した。

 そのとき培った企画力やコミュニケーション力は、冒頭で紹介した『スナック都ろ美』でも活かされている。

「もしもし、『スナック都ろ美』の玲子ママです!」

 そう言って、大企業に電話をかけるのも活動のひとつ。スナックのママを名乗る女性からの電話に、「誰だ、誰だ」と電話口から慌ただしい雰囲気が伝わってくることもある。

 例えば、嚥下障がい児でも食べられそうな商品を見つければ、販売元に電話をかける。

「ひきわり納豆よりさらに細かい納豆がスーパーで販売されているのを見つけ、これは嚥下食にいいぞ!と。動画で紹介したいと交渉するんです」

 そんな具合で、企業にどんどん声をかけている。1本の電話が“嚥下障害”向けの商品開発に発展することも。

「企業との打ち合わせでは、どんなお偉い役職の方に対しても、スナックママの立場を利用して、『〇〇ちゃん』と呼んじゃうので、場が和む(笑)。“スナック”と名づけたことで自然と明るい雰囲気が生まれて助かっています」

 嚥下障害は加齢に伴う筋肉の衰えで高齢者が発症することが多く、介護食の商品は充実している。だが、子ども向けの商品は少ないという。

「家では手作りですが、外出のとき持参するレトルト商品の選択肢が少ないことは、ママたちの悩みです。サバの味噌煮とか渋いメニューが多くて(苦笑)。いま、美味しい高齢者向けの弁当を作る会社と子ども向けの弁当も作ろう!と開発に携わっています」