時代遅れの「日本の卵事情」
細川先生は、日本の卵には食肉よりも厳しい一面があると説明する。
「人間にとって都合のいいように品種改良がなされ、肉用の鶏はブロイラー、採卵用の鶏はレイヤーと呼ばれています。
レイヤーは食肉には適しませんから、卵を産めないオスのレイヤーには用途がなく、生後すぐにシュレッダーのような機械ですりつぶされるなど、殺処分されているのが現実です」(細川先生)
実は今、世界の畜産のスタンダードとなっているのは、家畜を快適な環境下で飼養することで健康的な生活が送れるように配慮した飼育を目指す“アニマルウェルフェア(動物福祉)”。
「EUの一部やアメリカの複数の州では採卵鶏のバタリーケージ飼いは禁止されています。実際、東京オリンピック前には、海外の選手からバタリーケージ飼いの鶏卵の提供を見直してほしいという嘆願書が出されています」(細川先生)
「アメリカのマクドナルドや格安大型スーパーのウォルマートは、近い将来、バタリーケージ飼いの卵は扱わないと宣言しています。日本はアニマルウェルフェアの観点においては大きな遅れをとっているんです」(河岸さん)
安さの裏側でわかる“食の安全性”
過酷な環境の採卵鶏が産んだ卵は、売り手の事情でさらに安値で出回ることがある。
「卵は特売日や土日によく売れます。しかし、売れる日に合わせて鶏がたくさん卵を産むわけではありません。産卵後の卵はパック工場に運ばれて洗卵・選別がなされてチルド管理され、出荷数に応じてパック詰めが行われます。
実は、卵のパックに記されている賞味期限はパック詰めをした日から換算されるんです。つまり、同じ賞味期限のパックの中に産卵から5日程度たったものも混在している可能性があるということ。
出荷数の多い特売日は、古い卵を混ぜていることもあるんです。ですから、卵を買うときには、できるだけ産卵日(採卵日)が記されているものを選ぶと安心です」(河岸さん)