“自分らしさ”こそ真の美しさと気づいた
そんな塩崎さんに転機が訪れる。ファッション業界で働いていた経験を買われ、主治医から、がん患者が主役のファッションショーの開催を提案されたのだ。
「正直なところ、私たちのようなモデルではない人がショーに出るのは難しいと思いました。
でも、それは間違いだとわかった。大変な状況を抱えているなか、それぞれの方が“自分らしく今を生きる”という信念を持ってランウェイを歩いていました。その姿こそ美しいと感じたのです」
このショーをきっかけに、「女性の美しさの定義が変わった」と話す塩崎さん。
同時に、ファッションが人の心に与える力の大きさも実感。その思いを今、ケア・介護用品ブランドのデザインに込めている。
「“自分らしく”というと難しく思いがちですが、それは自分の好きなものの集合体でできていると感じています。自分の好きなもので装い、その人のアイデンティティーを保つことが治療中の支えになる。それは、当事者だけでなく、看病する側の心も明るくすると信じています」
塩崎良子さん(40)●TOKIMEKU JAPAN社長。2017年にケア・介護用品ブランド「KISS MY LIFE」を立ち上げ、病院内店舗事業を開始。オンラインショップ https://www.kissmylife.jp/
(取材・文/河端直子)